2018年6月05日(1879号) ピックアップニュース
燭心
国会ではモリカケ問題の追及や働き方改革法案の審議中にもかかわらず、日大アメフト部員による悪質タックルがいまや世間の一大関心事である。加害学生には傷害罪が適用される可能性もあるというが、日大にはこの学生を守る気配がない。これは教育の放棄だ▼教育基本法前文には教育の目的として「真理と正義を希求する人間の育成」が掲げられている。大学には学問の自由を保障する憲法23条に基づき、人事や施設、学生の管理に関する自治が認められている。大学には学生を守り教育する義務があるのだ▼タテカン問題で揺れる京都大学の今年の入試会場に、3カ月後の今を予言するような看板があった。「受験生の皆さんへ 偉い人は自分の立場を守るために平気で嘘をつくし、真実をもみ消そうとする。だから人の言ったことを安直に信じるのではなく、自分の力で真理を探求し自分の力で物事を判断してほしい。真実は自分の目で確かめるものです。大学とはそういう場所だと思います。試験がんばってください」国会審議を揶揄したのか、大学当局への批判なのかは不明だが、学生を守るどころか犯罪に追い込んでしまった日大の関係者には耳の痛い言葉だろう▼大学における教育研究の質の低下は目を覆うばかりだが、当の京大ではタテカン撤去に絡んでついに大学が警察に捜査を依頼するという、一昔前には考えられなかった異常な事態が生じている。大学が企業の予備校と化し、教育を放棄したその先に日本の未来はない(九)