2018年8月05日(1885号) ピックアップニュース
神戸市内小児科 入院・救急に関するアンケート結果
「病床数足りない」診療所の4割 協会神戸支部
神戸市内の病院で、小児科の閉鎖や救急受け入れ停止が続いていることを受け、神戸支部は6月11日、小児科を標榜している会員医療機関にFAXでアンケートを実施。148件に送信し、7月9日までに61件の返信を得た(回答率41.2%)。診療所・病院の別は診療所48、病院5、回答なし8で、専門医資格については、小児科専門医52.5%、総合医・家庭医・プライマリーケア医18.0%(複数回答)、非専門医27.9%となった。
神戸市によると、この10年間で小児科標榜医療機関は約2割減少している。この原因をどう考えるか複数回答で聞いたところ、7割近くが「少子化」(68.9%)と回答。「低診療報酬」(44.3%)、「長時間過重労働」(27.9%)、「医師不足」(27.9%)と続いた。
「開業の地域で小児科の病床数は足りていると思うか」に対し、診療所では、4割近くが病床数は足りないと感じている(図1)。回答には地域差があり、垂水区で66.7%、灘区で55.6%が「思わない」と、病床数が足りていないと感じている診療所が多い。両区とも近年、主要な病院の小児科病床が閉鎖されており、影響の大きさがうかがえる。
救急医療についても市内で地域差が認められる。「神戸市内の小児救急医療体制は十分だと思うか」については、「思う」42.6%、「思わない」32.8%、「わからない」23.0%と、十分と感じている医療機関が4割ある一方で、十分と思わない医療機関も3割あった。「十分だと思う」は須磨区で100%、北区で80%の診療所が回答している一方、兵庫区の75.0%、東灘区の57.1%、垂水区の44.4%が「十分だと思わない」と回答している。
小児科の二次救急輪番制で、一部のシフトが組めなくなっていることについて、「知っている」47.5%、「知らない」52.5%と、過半数が「知らない」と回答した。
「あった」内容について尋ねたところ(複数回答)、「入院先が自宅から遠かった」60.7%、「入院先が見つからなかった」50.0%、「付添者確保が困難だった」35.7%、「その他」35.7%となった。「入院先が見当たらなかった」ことがあるとの回答が50%に見られたことは憂慮すべき事態である。
障がい児では罹患時に入院を求められることが多く、患者・家族が日頃から気軽に受診できる環境が整っていることが重要となる。障がい児の受け入れについて聞いたところ、日常一般診療について、「普通に受け入れ」73.8%、「他院を紹介」14.8%、「積極的に受け入れ」9.8%と、8割超が受け入れていると回答した。
自由記述欄には、小児科の今後への不安や、病院小児科の不採算の改善・二次救急の充実、発達障害へ対応できる医療機関の増加、病児保育の充実、小児科診療報酬の増額など、現在の小児科医療について改善を求める声が、多数寄せられた。
アンケート結果を受けて 地域密着型の病床整備を
核家族化、地域コミュニティの崩壊に加え、非正規雇用の増加や実質賃金の抑制により、共働き等が増え、通院時間の確保に困難をきたす家庭も増えています。
ワクチンの普及により重症感染症のリスクは軽減していますが、子どもにとって風邪を主体とした急性感染症は、脱水や痙攣の合併による緊急化、重症化の可能性から依然脅威です。食物アレルギーや気管支喘息や在宅障がい児への救急対応も懸案事項です。
これらのことから、小児科の救急、入院対応確保の必要性は決して減少しておらず、むしろ、より生活圏に近いところで整備する必要に迫られています。広域・集中化ではなく、地域に密着した、診療所と連携の取りやすい中小病院での小児科・小児科病床が必要です。
近年の病院小児科の閉鎖は、医師不足や採算悪化、公立病院の統廃合によるものであり、この背景には、政府の医療費抑制政策に基づく、医師数・診療報酬抑制、病床削減があり、この転換が求められます。
しかし、政府が進めようとしている「働き方改革」や新専門医制度、消費税増税は、医師の長時間労働や地域偏在を悪化させるとともに、医療機関の経営を悪化させ、医療崩壊を加速させるものです。
医療従事者と国民の健康といのちを守るため、今回の結果を活用し、臨床現場の声をこれからも発信していきたいと思います。
最後に、お忙しい中、アンケートにご協力いただきました先生方に深謝いたします。
垂水区では7割が「病床足りない」
医院の小児科の患者数の10年間の変化については、「減った」50.8%、「変わらない」21.3%、「増えた」19.7%と、過半数が減ったと回答。ただし、病院に限って見ると、「増えた」が60.0%となり、病院への集中の可能性が示唆された。神戸市によると、この10年間で小児科標榜医療機関は約2割減少している。この原因をどう考えるか複数回答で聞いたところ、7割近くが「少子化」(68.9%)と回答。「低診療報酬」(44.3%)、「長時間過重労働」(27.9%)、「医師不足」(27.9%)と続いた。
「開業の地域で小児科の病床数は足りていると思うか」に対し、診療所では、4割近くが病床数は足りないと感じている(図1)。回答には地域差があり、垂水区で66.7%、灘区で55.6%が「思わない」と、病床数が足りていないと感じている診療所が多い。両区とも近年、主要な病院の小児科病床が閉鎖されており、影響の大きさがうかがえる。
救急医療についても市内で地域差が認められる。「神戸市内の小児救急医療体制は十分だと思うか」については、「思う」42.6%、「思わない」32.8%、「わからない」23.0%と、十分と感じている医療機関が4割ある一方で、十分と思わない医療機関も3割あった。「十分だと思う」は須磨区で100%、北区で80%の診療所が回答している一方、兵庫区の75.0%、東灘区の57.1%、垂水区の44.4%が「十分だと思わない」と回答している。
小児科の二次救急輪番制で、一部のシフトが組めなくなっていることについて、「知っている」47.5%、「知らない」52.5%と、過半数が「知らない」と回答した。
半数が「入院先に困難」
「入院適応の小児が発生した場合に困難を感じたことがあったか」には、診療所で半数超が困難を感じたことがあったと回答している(図2)。特に、垂水区の診療所では78%が「あった」と回答しており、入院を受け入れる病院の不足が推察される。「あった」内容について尋ねたところ(複数回答)、「入院先が自宅から遠かった」60.7%、「入院先が見つからなかった」50.0%、「付添者確保が困難だった」35.7%、「その他」35.7%となった。「入院先が見当たらなかった」ことがあるとの回答が50%に見られたことは憂慮すべき事態である。
障がい児では罹患時に入院を求められることが多く、患者・家族が日頃から気軽に受診できる環境が整っていることが重要となる。障がい児の受け入れについて聞いたところ、日常一般診療について、「普通に受け入れ」73.8%、「他院を紹介」14.8%、「積極的に受け入れ」9.8%と、8割超が受け入れていると回答した。
自由記述欄には、小児科の今後への不安や、病院小児科の不採算の改善・二次救急の充実、発達障害へ対応できる医療機関の増加、病児保育の充実、小児科診療報酬の増額など、現在の小児科医療について改善を求める声が、多数寄せられた。
アンケート結果を受けて 地域密着型の病床整備を
神戸支部幹事 森岡 芳雄
核家族化、地域コミュニティの崩壊に加え、非正規雇用の増加や実質賃金の抑制により、共働き等が増え、通院時間の確保に困難をきたす家庭も増えています。ワクチンの普及により重症感染症のリスクは軽減していますが、子どもにとって風邪を主体とした急性感染症は、脱水や痙攣の合併による緊急化、重症化の可能性から依然脅威です。食物アレルギーや気管支喘息や在宅障がい児への救急対応も懸案事項です。
これらのことから、小児科の救急、入院対応確保の必要性は決して減少しておらず、むしろ、より生活圏に近いところで整備する必要に迫られています。広域・集中化ではなく、地域に密着した、診療所と連携の取りやすい中小病院での小児科・小児科病床が必要です。
近年の病院小児科の閉鎖は、医師不足や採算悪化、公立病院の統廃合によるものであり、この背景には、政府の医療費抑制政策に基づく、医師数・診療報酬抑制、病床削減があり、この転換が求められます。
しかし、政府が進めようとしている「働き方改革」や新専門医制度、消費税増税は、医師の長時間労働や地域偏在を悪化させるとともに、医療機関の経営を悪化させ、医療崩壊を加速させるものです。
医療従事者と国民の健康といのちを守るため、今回の結果を活用し、臨床現場の声をこれからも発信していきたいと思います。
最後に、お忙しい中、アンケートにご協力いただきました先生方に深謝いたします。
図1 先生がご開業の地域で、小児科の病床数は足りていると思いますか(診療所)
図2 入院適応の小児が発生した場合に困難を感じたことがありましたか(診療所)
図2 入院適応の小児が発生した場合に困難を感じたことがありましたか(診療所)