兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年10月25日(1892号) ピックアップニュース

主張 地球温暖化の防止へ 経済優先の価値観を転換しよう

 20年ほど前まではまだ、四季の移り変わりが明確で、気象病的要素のある気管支喘息などでは、ある程度発作好発期が毎年毎年カレンダーの日付で予測できていたように思う。近年の四季の移り変わりの変容を体験するにつけ、「地球温暖化」に強い懸念を抱く。
 シベリアの永久凍土が溶け始め、地下に蓄えられた炭素に細菌が接触し始め、最強の温室効果ガス、メタンが発生し始めている。昨今の台風や洪水などの異常気象も地球温暖化によるものかもしれない。
 セアカコケグモやヒアリは、流通のグローバル化で説明がつくだろうが、珊瑚礁の白化や南洋の魚の北上は明らかに日本周辺の海域の海水温が上昇してきていることを示している。インド洋でも海水温上昇が確認されている。地球温暖化は、大気の温暖化から海洋温暖化へと進み、温暖化の緩衝壁の一つを破壊し、突破しつつあるように思える。
 この予測が正しければ、やがて大気−海洋循環が破綻し、地球温暖化による気候変動がより顕著となり、さらなる異常気象の多発を見るようになる。その次には世界的海洋の深層循環という壮大な環境維持システムの破綻が待っているとも言われている。人類が生きていくのに必要なレベルの地球環境の恒常性さえも失われてしまう不可逆な事態が起こる可能性がある。
 地球温暖化防止には、未来の人類、私達の子孫にエネルギーをはじめとする資源を残していくという側面もある。当たり前のことだが、環境も資源も有限であり、誰のものでも、どの企業のものでも、どの国のものでもない、プライスレスなものである。経済活動を優先して、競争し、奪い合い、枯渇させてしまってはならないものである。文明の進歩が新たなるものを見出してくれるなどと悠長なことを言っていたり、楽観視できたりするようなものではすでになくなってきているように思う。
 日本では電力自由化に伴い、安い電力を求めて温室効果ガス排出量の多い石炭火発が新設・増設されている。見えない、すぐには影響のない汚染で確実に人類を蝕んでいる放射能もしかり。核兵器と原発の拡大が止まらない。今が良ければそれでいいはずはない。グローバル化、情報化、文明化は拙速な近視眼的判断を求めてくる。環境と資源の価値にもっと重きを置くべきである。
 価値の転換を行い、エネルギーと資源の消費を抑制し、効率化を行う。そういう成熟した人智を世界的レベルで共有・醸成することが最も重要になってきていると思う。
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