2018年11月15日(1894号) ピックアップニュース
燭心
最近の学会では、発表の最初に「この研究に関して利益相反はありません」というスライドを入れ込むことが多くなった。学会における利益相反とは、研究者としての社会的責任と、研究者(家族を含む)が外部との関係によって得る利益とが相反するため、研究者としての「公正な姿勢」が損なわれる、または第三者から疑われることを指す。特定の企業から利益を受けている研究者は、企業に有利なように研究結果を誘導する可能性を疑われないよう、自らを厳しく律することが求められるのだ。利益相反は、政治家、弁護士など信任を得て職務を行う地位にある人物に適用される▼翻って辺野古の埋め立て承認撤回に対する政府の対応はどうだ。民意を受け前知事が命をかけたこの撤回に、防衛省はあろうことか行政不服審査法に基づき国交省に効力停止を申し立て、石井国交相がそれを認め効力停止を決めた▼この政府はどこまで国民を愚弄すれば気が済むのか。これは明らかな利益相反ではないか。行政不服審査請求は、国や地方公共団体などの「公権力による処分」に対して、国民が不服申し立てできるように設定された制度であると政府広報にも記載されている。国民が権力に対して抵抗できる弱者救済制度である。公権力の極みである政府が恥も外聞もなく行使することには強い違和感を覚える▼国交省は「国の機関であっても一般市民と同様に審査請求ができる」と言い放つ。政府は「利益相反あります」の看板を出すべきだ(九)