2019年3月15日(1904号) ピックアップニュース
みんなでストップ!患者負担増 インタビュー(10)(最終回)
もう一回り署名に協力を 三田市・中西歯科医院 中西 透先生
署名用紙を受け取るとまず私とスタッフが署名し、そして出入りの業者の方にも協力をお願いしています。それから受付に置いて、患者さんにも書いてもらっています。クイズチラシは受付に置くだけで応募が集まりますが、署名を自ら進んでしてくださる方は少ないので、スタッフから患者さんに一声かけることが重要だと感じています。
今検討されている政府の負担増計画は、後期高齢者の自己負担割合を1割から2割へ倍増させるもので、年金暮らしの患者さんにとっては非常に厳しいものです。負担が増えると受診抑制が起こり患者さんも減少し、医療界全体の縮小につながりかねません。政府は社会保障費削減を主張していますが、まず行うべきは法人税の引き上げと、防衛費の削減ではないでしょうか。
国民医療の向上には医科・歯科の連携も重要だと思います。私の歯科医院では必要な患者さんには医学管理料を算定するようにしていますが、その対象となる患者さん、つまり高血圧や糖尿病を患っている方が多いように思います。しかし、社会保障費削減により、診療報酬での十分な保障がないと、連携も難しいです。社会保障の充実こそ必要だと思います。
協会には7400人を超える会員がいるわけですから、もっと多くの方に署名運動に参加してほしいですね。多くの先生を巻き込んで、もう一回り運動を広げると署名の力はもっと大きなものになるのではないでしょうか。特に若い先生にはがんばってほしいと願っています。
政策解説(7)(最終回)
医療制度改悪を選挙の争点に
政府が進める患者負担増計画について、社会保障改悪と統一地方選、参議院選の関係について解説する。社会保障改悪 選挙後に先送り
2月15日、政府は健康保険法など8本の法律をまとめた医療・介護関連法改正案を国会に提出した。この法案には、マイナンバーカードに健康保険証としての機能を持たせることや審査支払機関の機能強化などが盛り込まれたが、社会保障における患者、国民負担増は盛り込まれなかった。これは、「春に統一地方選、夏に参院選を控えており、医療や介護の保険料や窓口負担の引き上げなど国民の反発を招きかねない負担増のメニューが明らかにされるのは、...夏以降とみられる」(2018年10月2日付毎日新聞)などと指摘されているように、政府与党が国民負担増計画の選挙への影響を考慮したものである。
実際、昨年12月10日に開催された経済財政諮問会議後の記者会見で、茂木敏充内閣府特命担当大臣は「給付と負担の見直しを含めた医療の問題、さらには年金の問題も含めた社会保障全体の改革を来年の夏以降、本格的に議論していく」としている。
選挙後に社会保障制度を改悪するのは政府与党の常套手段である。これまでにも、70歳から74歳の高齢者の医療費窓口負担の1割から2割への引き上げなどを盛り込んだ社会保障改革プログラム法と一定の所得のある人の介護サービス利用料を1割から2割に引き上げることを盛り込んだ医療・介護総合確保法は、2013年の参議院議員選挙後に法案が明らかにされ、国会で成立した。
しかし、社会保障制度のあり方は国民の重大な関心事であり、もっとも重要な争点として選挙で論戦が交わされるべきである。直近の国政選挙である2017年衆議院選挙の際に行われた毎日新聞の世論調査では、「衆院選で最も重視する争点は」との設問に23%の人が「医療・年金」と回答しており、「憲法改正」「北朝鮮の核・ミサイル問題」はそれぞれ11%だった。
この間、マスコミでも社会保障に関する政府の議論はほとんど報道されていないが、政府・財務省は、医療・介護の分野で患者・利用者負担増のメニューを並べている(表)。
負担増計画を選挙の争点に
これまで取り組んできた「みんなでストップ!患者負担増」署名は、政府が進める患者・国民負担増計画を国民の前に示し、選挙の争点とすることにも大いに役立つものである。また医療政策における地方自治体の役割が非常に高まっている。県立病院の統廃合はもちろん、国民健康保険の運営、臨床研修病院の定員の決定、医学部への地域枠増減要請、日本専門医機構への要請、民間病院への病床機能転換や病床削減の要請などは、すべて県の権限とされている。そればかりか、診療所が多い地域での新規開業医療機関に対して、県が設置する地域医療構想調整会議が休日診療や在宅診療を行わせることも、厚生労働省では議論されている。
選挙は患者・医療者の未来を左右するものに
今年行われる統一地方選挙と参議院議員選挙は患者、国民だけでなく、医師・歯科医師にとっても、その未来を左右する重要なものとなる。これらの選挙で、各党、各候補からさまざまな医療・社会保障政策が提案され、国民全体で社会保障充実のための議論が盛んになるよう、私たちも奮闘しよう。表 政府・財務省が参院選後に狙う主な改悪メニュー