兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年4月05日(1906号) ピックアップニュース

市民公開シンポ「消費税増税でどうなる?私たちの暮らしと医療」
問題だらけの消費税増税

 10%への消費税増税が経済に与える影響とは−−。政策部は3月16日、経済評論家の岩本沙弓氏、税理士で立正大学客員教授の浦野広明氏を招いて市民公開シンポジウム「消費税増税でどうなる?私たちの暮らしと医療」を開催した。講演で両氏は、消費税が日米貿易に及ぼす悪影響や、経済格差の拡大などの消費税による問題点を解説し、消費税増税は百害あって一利なしであり、中止に追い込むしかないことを明らかにした。

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消費税がもたらす悪影響について報告した岩本氏(左)と浦野氏(右)

米国も消費税を問題視
 岩本氏は、「米通商交渉と消費税」をテーマに講演。10月に迫った消費税増税について、日本の国内景気が「過去最長の景気拡大」となっているのは、リーマンショック後の世界経済が好調を維持していたためであり、アベノミクスの成果ではないと主張。アメリカ経済の先行きが怪しくなっている現在の情勢を踏まえ、景気を冷え込ませる消費税は10月には増税すべきではないと語った。
 また、アメリカは消費税を「非関税障壁」とみなしていると説明。日本の輸出企業に対し、商品製造時に負担した税金が還付されていること(輸出による消費税還付)を、日本の輸出企業への政府からのリベート(補助金)であり、公平な市場競争がなされていないと問題視していることが、公文書から明らかになっていると解説した。そしてトランプ政権は、今後日米通商交渉を進めるにあたり、自国企業を守るために日本の消費税への対抗策を検討しており、今後の交渉では、いま出されている条件以上の厳しい要求がなされようとしていると語った。
消費税は生存権をも無視
 浦野氏は、「消費税と税制のあり方」とのテーマで講演した。
 まず税制の基本は応能負担であるとして、日本の税制ではかつては所得が上がっていくごとに数多くの段階を踏んで税率が上がる累進課税構造が強かったが、現在では所得税は7段階、住民税は1段階しかなく、また最高税率も55%まで引き下げられ、累進性が大いに損なわれているとした。一方で税率引き上げが続く消費税は、あらゆる生活必需品に一律に税金をかけ、国民の生存権を無視したものである一方で、輸出大企業には消費税還付により利益を与えていると批判した。
 消費税を廃止するには、議会で多数を取ることが重要であるとして、投票率が高く手厚い福祉政策を実施しているスウェーデンや、実際に選挙を通じて消費税を廃止したマレーシアの例を挙げながら、国民の主権者意識を高め、社会保障を守る願いを投票で実現することが重要だと語った。
損税の解決は「ゼロ税率」で
 協会から辻一城税経部長が、医療機関における控除対象外消費税問題について報告。医療を提供するにあたって負担した消費税が国から還付されないために、患者の窓口負担に上乗せされたり、医療機関の重い負担になっている問題点について解説し、免税取引で実施されているように医療にかかった消費税を還付する明確で公平な制度(課税ゼロ税率)の導入を訴えた。
 各氏の報告後には西山裕康理事長がコーディネーターを務めるもとでシンポジウムを開催し、会場から出された種々の疑問や質問にそれぞれていねいに回答した。医師・歯科医師ら33人が参加した。
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