兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年5月15日(1909号) ピックアップニュース

「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会 市民シンポジウム
子どもの貧困解消へ政策の転換を
前川喜平元文科次官が講演

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前川氏が、弱者を切り捨てる国の政策を厳しく批判した

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(左上から時計回りに)橋口昌治氏、前川喜平氏、冨澤洪基先生、小尾直子氏、小島三和子氏、足立了平先生

 「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会は4月14日、兵庫県農業会館で市民シンポジウム「子どもと若者の教育と生活そして歯科医療」を開催、市民ら80人が参加した。元文部科学省事務次官の前川喜平氏が「子どもの教育と貧困、そして医療」と題し講演した。講演後にはパネルディスカッションを行い、各分野からの報告者が、歯科や貧困の問題について報告した。

 前川氏は、憲法25条「生存権」と26条「教育権」は社会権として密接な関係にあり、人間が個人として尊重される上で国が保障すべきことであるとし、「保険でより良い歯科」署名についても賛意を表明。この20年間に就学援助を受けている子どもが16人に1人だったのが7人に1人にまで増大するなど子どもの貧困は深刻で、学習と健康にも影響を与えており、世代間の貧困の連鎖も起きているとした。そして、貧困と格差の拡大の原因には弱肉強食の競争をすすめ、貧困に陥ったり健康を悪化させたり不幸な境遇になった人びとを「自己責任」だと切り捨てる、国の「新自由主義」政策にあると強調した。
 また日本国憲法は、個人の尊厳に基づく福祉国家を実現するためのもので、教育基本法は、民主的で平和的な社会の形成者を育成することを目的にしていたと説明。しかし、新自由主義は個人が連帯する中で市民社会をつくることを阻むよう競争で分断させ、秩序を強い権力で上から押し付ける「国家主義」的な考えに導いたとし、新自由主義・国家主義の人間観は間違いであるとした。
 その上で前川氏は、貧困と格差の拡大を解消するには、国の政策の転換が必要で、生活保護の改善、最低賃金引き上げ、非正規労働の正規化、労働者派遣法の見直しなど労働政策の転換、武器購入など防衛費増をやめ教育・福祉・医療にまわすこと、消費税を上げる前に軽減されている法人税引き上げと富裕層への税負担を求める歳出構造の転換などが必要であるとした。
 講演に引き続いて行われたパネルディスカッションでは、協会副理事長の足立了平先生が「学校歯科健診後調査からみた子どもの貧困」、小学校養護教諭の小島三和子氏が「保健室からみた子どもの健康状態」、「保険適用拡大を願う会」代表の小尾直子氏が「子どもの歯科矯正の保険導入を」、エキタス京都の橋口昌治氏が「最低賃金が1500円になったら歯科受診したい」のテーマでそれぞれ報告した。
 協会評議員の冨澤洪基先生が司会とコーディネーターを務め、連絡会代表世話人の中村泰先生が閉会挨拶し、終了後、歯の無料健康相談を開催した。
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