2019年6月15日(1912号) ピックアップニュース
「災害援護資金」返済免除が拡大
阪神・淡路の被災者の運動が実を結ぶ
免除基準は、住民税などを除いた年間所得が150万円未満であること、資産性の高い家に住んでいないこと、預貯金額が20万円以下などで、未償還額の7割超が免除となる。
法成立に先立ち、5月29日には協会・保団連も参加する「災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会(災対連)」が衆議院議員会館で第20回総会と、国会内集会を開催。協会から加藤擁一副理事長が参加した。
総会では、被災者生活再建支援法の支援限度額を500万円に引き上げることなどを求める2019年度方針を採択した。集会では、全国から集まった被災者・支援者が、内閣府や復興庁に対し、生活再建支援を拡充するよう求めた。
改正災害弔慰金法の成立を受けての加藤副理事長の談話を掲載する。
談話 さらなる制度の拡充を
副理事長 加藤 擁一
災害被災者に最大350万円を貸し付けた「災害援護資金」の返済免除要件を拡大する災害弔慰金法改正案が成立した。私たちが長年要求し続けてきてようやく実現したものであり、歓迎したい。阪神・淡路大震災時は、国に生活再建資金を支給する制度がなく、被災者に自治体を通じておよそ5万7千件(総額約1309億円)の災害援護資金が3%の利率で貸し付けられた。
1998年には被災者らの運動が実り、被災者生活再建支援法が制定され、住宅再建資金として最大300万円の支給が受けられるようになったが、阪神・淡路の被災者には遡及適用がなされず、多くの被災者の借金苦の原因となっていた。昨年9月末現在で約53億円分が未返済で、そのほとんどが返済能力のない被災者である。
兵庫県保険医協会も加盟する阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議は、これまでも神戸市などと話し合い、少額返済などを認めさせてきた。国は2015年、従来は借受人と保証人の死亡か重度障害としていた免除対象を、生活保護や自己破産世帯、弁済が見込めないと自治体が判断した人にも拡大することを自治体に通知していたが、今回の立法はそれが明確化されたものである。
「災害援護資金」は、2011年の東日本大震災では特例として利率1.5%で、保証人がいれば無利子、返済期間も10年から13年に延びるなど貸し付け条件が緩和されたが、2016年の熊本地震では、また、元の貸付条件に戻された。
東日本の被災地では、今後本格的に返済の時期に入るが、「生活が厳しい」「病気になり治療費がかさむ」などの理由から、仙台市や石巻市での滞納率は25%以上となっている。
私たちは、阪神・淡路大震災を経験した者として、同法の「災害援護資金」貸し付け条件を東日本大震災並みにすることや、返済にあたっては被災者の生活状況を十分に考慮して、猶予や免除を行うことをさらに求めていく。そして何よりも、「被災者生活再建支援法」を拡充し、借金に頼らなくても住宅や生活の再建が可能になるよう求めて、運動を続けていきたい。自然災害が毎年相次ぐ中、国民が安心して暮らせる制度の改善を求めていきたい。