2019年6月25日(1913号) ピックアップニュース
燭心
初夏も過ぎ新入職員のスーツもくたびれが見え始める。〝目には青葉山ホトトギス初鰹〟有名な江戸時代の山口素堂の句であり〝には〟を除くとすべて名詞の羅列だが鮮烈なパワーを感じる。仲夏の強い日差しの中、視覚・聴覚・味覚に訴え、いわゆる五感、肌で感じるみずみずしさがある▼都会の真ん中では、家庭ごみのせいかカラスの声が大きい。神戸市内でも六甲山を越えるとさまざまな鳥の声を聞くことができる。ホトトギスの声を聞いたことがおありだろうか? 甲高い声で、間欠的に啼く。〝てっぺんかけたか〟などと聞こえると言われているが、実際にはかつてのコメディアンの〝ラッスンゴレライ〟を口笛でするとそれらしく聞こえる。お試しあれ▼見聞という言葉がある。文字通り視覚・聴覚を駆使して感じ学ぶことであるが、最近は異変が起こっている。通勤電車に乗って周りを見渡してみる。異様な光景がそこにはある。ほぼ全員と言ってもいいくらいスマホとにらめっこ、両耳はイヤホン、ひたすら指で画面を操作▼五感で感じることを自ら拒否しているようだ。季節とともに変わりゆく風景、人々のファッションや美形の姿、鳥の声や町の騒音、匂い。何か大切なものを失っているように思えてならない▼新聞も読まず、テレビニュースも見ない、情報は自分好みのものをスマホからのみ。最近の選挙では低投票率を更新しているようだ。この現象が大いに影響していることは間違いない。自らの権利を放棄しないように(無)