2019年7月15日(1915号) ピックアップニュース
燭心
成人病が生活習慣病と名前を変えたのは1996年のことだ。糖尿病や高血圧症は、40歳を過ぎたころから増加する病気ということから成人病の名前が付けられたというが、若いころからの生活が発症や進行に関与する可能性が高く、生活改善を促す観点から生活習慣病という表現がふさわしいとされた▼名付け親の日野原重明先生は、予防しなければならないという純粋な使命感に燃えておられたに違いない。しかし、この改名は彼の思惑を離れ思わぬ方向に歩き出す。病気になったのは生活習慣を改善しなかったあなたが悪いという疾病の自己責任論である▼長谷川某なる元アナウンサーが、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にせよ! 無理だと泣くならそのまま殺せ」とブログに書いたことは記憶に新しい。2000年から始まった健康づくりの国民運動「健康日本21」では、59項目の目標のうち10年後に達成できたのは10項目だけだった。理解はしても行動を変えることは難しい。メタボ予防のため週2回運動できる生活など、自助努力だけではとてもできない。1日8時間の労働で健康な生活ができるよう働き方を変えるには政治が変わる必要がある▼先般、政府は医療費削減のために認知症を1割減らすという予防重視の方向に舵を切ろうとしたが、国民の反対で失敗した。排除ではなく認知症と共生できる社会を作るためには、医療者も政治に働きかける必要がある。折しも参議院選挙、これは選挙に行くしかない。(九)