2019年7月15日(1915号) ピックアップニュース
尼崎市生活保護指定医療機関個別指導
高圧的な指導のもと18年度の件数9倍・返還額4倍
尼崎市は指導した医療機関の「瑕疵」を指摘した際に、市の職員が「不当利得」などという言葉まで浴びせながら「過誤調整」という名の「返還」を迫っている。
この結果、2017年度の返還件数1件215万4千円に対して、2018年度は9件7593万円と急増。指導を受けた2件に1件が返還を求められており、その平均額は843万円と、昨年度の4倍に大幅増加している。
「最大5年」の返還期間が影響
すでに本紙で報道しているように、尼崎市は「本来は一人の患者に対して一つの医療機関しか算定できない在宅時医学総合管理料(在医総管)を、複数の医療機関で算定している」ことなどを指摘し、重複算定を指摘した医療機関に、診療報酬の返還を求めている。返還金額が多額となっている背景には、昨年度から本格的に強めた一連の指導で、返還の遡及期間を最大5年にもわたって求めていることがある。昨年、指導を受けたある診療所は、重複算定について「他医療機関の算定状況の確認に努めているが、完全に把握しきることは困難」「市自らは厚労省が自治体に求めているレセプトチェックを怠ってきたにもかかわらず、医療機関に一方的に責任を押し付け、5年もの返還を迫るのは不当」だと、同市に申し入れを行っている。
市議会でも問題視
この問題は、6月の尼崎市議会でも「行き過ぎた指導」という観点から取り上げられている。徳田稔(日本共産党)議員は、尼崎市が健保法での「監査」にあたる法令を根拠に指導を行っていたことは「脅し」であること、医学的知見のない職員が訪問診療を受けている患者について、介護タクシーを利用させるよう執拗に医療機関に迫っている実態が医師の裁量権侵害に当たると強調。さらに、「過誤調整」の名で5年分もの診療報酬返還を迫っていることについて大阪府・市などでは、遡及期間を「1年以上」と通知し、実態としても1年分の返還しか求めていないことや、返還にあたっては医療機関の自主性を尊重すべきことなどを指摘。
また、酒井一(緑のかけはし)議員は、「生活保護の医療費の支払い割合が高い医療機関」という、おのずと貧困地域の医療機関が選定される方法であることは「差別」であること、個別指導で発見された他医療機関との重複請求について、5年分の遡及返還を求めるのは不当であることなど、市の姿勢を問いただした。
これら両議員の指摘についても、尼崎市は基本的にはこれまでの姿勢を崩しておらず、今後も追及が必要である。