兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年7月15日(1915号) ピックアップニュース

国保自治体アンケート結果
差し押さえ過去最多7114件

 協会が昨年12月に実施した「国保(国民健康保険)自治体アンケート」の結果、保険証の未交付が3万世帯超に上り、依然として多くの人が医療機関で必要な医療が受けられない状況が明らかになった。差し押さえ件数は調査開始以来最多で、神戸市など10市町が、保険料は「上昇する見込み」と回答した。アンケートは1988年から行っており、27年連続で県下の全自治体から回答を得ている。

神戸の資格証1.7倍に
 県全体の保険証未交付数は3万1598世帯、未交付率は被保険者世帯比で4.2%となり、前回調査からやや低下した(図1)。しかし、尼崎市で9.9%、神戸市で6.7%、姫路市で5.9%など、都市部で未交付率が高く、多くの加入者がいまだ「無保険」状態に置かれている。
 国保料滞納世帯に交付される、有効期間が短い短期被保険者証の交付は、2万6583世帯、3.53%となり、5年前の5万世帯超からは減少しているものの、前年に比べ4千件以上増加している。
 短期証の有効期間については、「1カ月以下」が1840世帯、「3カ月以下」が3799世帯と、きわめて短い期間の発行のものがあり、継続的な通院が困難な状況に置かれていると考えられる。
 医療機関を受診した際、いったん全額を自己負担しなければならない資格証明書発行世帯数は、2017年度8791世帯、被保険者世帯比で1.17%(図2)と、前年に比べ、約2千世帯増加した。市町別では神戸市の発行数が、3214件から5718件へと2504件、約1.7倍に増加した影響が大きい。理由について神戸市は外国人留学生の増加によるものとしている。
 窓口で医療費全額を窓口負担しなければならない資格証明書は、必要な医療機関受診を妨げるもので、患者の健康悪化につながる可能性が極めて高い。宝塚市・丹波市・養父市・市川町・福崎町の5市町は資格証明書を発行しておらず、協会は市町が資格証明書を発行しないよう求めていく。
5世帯に1世帯が保険料を滞納
 保険料を滞納している世帯数は14万9303世帯で、国保加入世帯の19.8%、5世帯に1世帯に上る。
 滞納世帯が1年6カ月を超えた際、差し押さえが行われる場合がある。差し押さえは7114件となり、本項目の調査を開始した12年度以降で最高となった。姫路市で915件、宝塚市で680件、伊丹市で557件など、前年より大幅に増加した市町が目立つ。
 法定の保険料軽減・免除制度利用世帯は、50万426世帯と、全体の66.5%に上る。自治体による独自の保険料減額制度の利用世帯数は8万847世帯で、全体の10.7%。市町別の内訳では、尼崎市が加入世帯の52.1%にあたる3万4103世帯、西宮市で41.4%にあたる2万4126世帯、神戸市で7.1%にあたる1万5485世帯が利用している。この3市が独自減免利用世帯の9割を占め、独自減免制度がない市町も多い。国保料是正へ、自治体独自の減免制度の拡充が求められる。
 国保には国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担を免除、減額、猶予する制度が定められている。44条に基づき、制度に対応する条例もしくは規則・要綱を全市町が設けているが、住民に周知されておらず、利用者は116世帯にとどまるなど、44条が活かされていないことが明らかとなった。
10市町で保険料上昇見込み
 国保の都道府県化の影響についての質問では、保険料について、「上昇する見込み」と答えたのは10市町で昨年と同数となったが、調査後に県の標準保険料率が発表されたため、現時点の見込みとは異なる。
 県の標準保険料へ移行する計画はあるか聞いたところ、「ある」と回答したのは2市町のみで、「未定」30市町「ない」9市町となった。「ない」と回答した神河町からは、「標準保険料(税)率は、法定および法定外の繰り入れが反映されていないため、移行はまずありえないと思います」との意見が寄せられているように、加入者の負担を考えると標準保険料への引き上げは難しいと認識している市町が多いと考えられる。

図1 保険証未交付数・率の推移
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図2 資格証明書と短期保険証の交付率の推移
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国保アンケート
求められる国庫負担の抜本的増額と法定外繰入の継続・拡充
 市町村国保には、「年齢構成が高く、医療費水準が高い」一方で、「無職・低所得者が多く、所得水準が低い」ため、「保険料負担が重い」「収納率が低い」などの構造的問題があると指摘されている。
 各市町は独自で法定外繰り入れを行い、保険料を引き下げているが、この繰入総額は、年々減少し続けている。都道府県化と一体で開始した保険者努力支援制度により、保険収納率の向上や法定外一般繰り入れの削減が評価され、調整交付金が増減されるため、市町村の法定外繰り入れが困難となっていることが考えられる。
 この制度により自治体はさらなる保険料引き上げと徴収強化を強いられており、保険証の未交付、短期被保険者証・資格証明書の発行、差し押さえが増加している可能性がある。
 国保は市民の助け合いの制度ではなく、憲法25条の生存権によって定められた社会保障制度の大切な柱の一つである。
 国保財政を立て直し、保険料高騰と滞納者増の悪循環を断ち切るためには、国庫負担の抜本的な増額、各自治体が行っている法定外繰り入れの継続・拡充が求められる。

県下自治体の国保保険証の未交付数、未交付率、差し押さえ件数一覧
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