2019年8月05日(1917号) ピックアップニュース
燭心
もうすぐお盆、各地で花火大会が真っ盛りである。8月3日は神戸の花火大会、保険医協会は鑑賞会を農業会館で毎年行っている。夜空に次々打ち上がる大輪の花火は、夏の風物詩だ。しかし「空襲を思い出させて、好きじゃない」との、お年寄りの言葉も私たちは忘れてはならないと思う▼終戦の年、神戸・阪神地区は、のべ128回の空襲を受けた。無数の焼夷弾が落とされた。ほぼ2日に1度である。街は丸焼けになり、8千人以上が犠牲になったと言われる。食料の欠乏に加えて毎夜の空襲の恐怖で、市民の疲弊は想像を絶するものだったろう。「火垂るの墓」の清太少年が三ノ宮駅で力尽きて死んだのは74年前のことだ▼今でも、JR三ノ宮駅南側の、フラワーロードにかかる高架橋には、当時の機銃掃射の跡が残っている。阪急からJR駅に向かう歩道橋から見ると、厚い鋼板に直径5㎝程の穴がいくつも開いているのが分かる。阪急三宮駅の大屋根には、焼夷弾がぶち抜いた穴を修復した跡も残っている。多くの人は知らずに通り過ぎているが、物言わぬ歴史の証人である。目を瞑って当時を想像してほしい▼北方領土を取り返すのに「戦争しないとどうしょうもなくないですか」という議員が現れた。首相は、改憲を自分の任期中に何としてもやりたいと言う。選挙が終わって、この夏、もう一度戦争とは何かを考えたい。先人たちの遺してくれた平和の意味を。そういえば、お盆の花火は、亡くなった方々への慰霊でもある。(星)