2019年8月25日(1918号) ピックアップニュース
尼崎市による生活保護個別指導での自主返還問題
厚労省「遡及期間に疑義」
要請には、協会の森岡芳雄副理事長をはじめ、尼崎医療生協・萌クリニックの多田安希子事務長と同法人理事会事務局の岸本貴士氏、ひまわり医療生協・田島診療所の酒井成美事務長ら個別指導を受けた医療機関職員らが出席。厚労省側は、社会・援護局保護課の生沼純一課長補佐と千葉樹係長が応対した。
協会は、尼崎市が2018年度に実施した生活保護指定医療機関への個別指導18件のうち、過誤調整が9件・7593万円(返還を指摘された医療機関平均843万円)にもおよんでおり、返還事例の多くが同一患者に対する在宅時医学総合管理料の複数医療機関による算定であると説明。各医療機関の自己努力だけでは他院での算定状況の把握に限界があり、尼崎市自身もレセプト点検してこなかった事項を、個別指導によって5年間遡及して返還を求めることは、「制度の趣旨、医療扶助に関する事務取扱等の周知徹底を図る」(厚労省「生活保護法による医療扶助運営要領」)という指導の目的からも逸脱していると訴えた。
自主返還は「和解的なもの」
協会はさらに、5年の遡及期間について尼崎市が「仮に過誤調整・返還期間を1年にすると、残りの4年分について、生活保護費の国庫負担分である4分の3を市は国に返還しなければならない」と説明していることについて、厚労省の見解を質した。厚労省は、「従来は同一受給者でも医療券番号が毎月異なっていたのでレセプトの突合点検は難しかったが、2016年に番号を固定するよう各自治体に通知している。支払基金では固定化された医療券番号に基づきレセプトチェックする前提」で「レセプトに疑義があるのであれば、尼崎市は支払基金に差し戻せばよい話」と説明。その上で、「被保護者の不正受給などに対する行政処分では、返還金請求を行使できる遡及期間は5年だが、そもそも過誤調整・自主返還に時効という概念はない」と述べた。
協会が「『自主返還』というのは行政と医療機関による話し合い、一種の和解的なもので、尼崎市が返還期間を1年にしたからといって、残りの4年分を同市が国に返還する必要はないということか」と確認すると、「その通りだ。行政処分による債権回収とは別問題だ」「誤解が生じているかもしれないので、尼崎市に事実関係を確認する」と返答した。
協会はまた、個別指導以外でも、医師でない市職員が主治医の医学的判断に事実上介入し訪問診療などをやめさせるようなケースがあることも指摘し、改善を求めた。