2019年9月15日(1920号) ピックアップニュース
燭心
戦後の医療技術はめざましく発展した。昭和時代、日本人の平均寿命は約30年延び、〝人生50年〟という言葉は死語となりつつある。がん治療では免疫療法薬など新薬の登場は言わずもがな、各部位の人工関節置換術、白内障手術等々、QOL向上を図った医療技術が多く見受けられる▼歯科分野でも同様に、昔は噛みにくいなど口腔に異常を感じても50歳程度で寿命が尽きていたが、人生80年時代の到来により、口腔機能が低下した30年間が目立ってきた。その中でインプラント治療は、安全性や保険収載などの課題はあるものの、美味しく物を食べたいという欲求と要求に対して医療が真摯に応えた〝人生80年時代の副産物〟と形容できよう▼しかし医療以外では、長寿社会に乗り遅れた分野が多く存在する。特に社会保障では、年金分野の遅れが際立つ。高齢化は急に始まったわけではない。数十年前から予見できていた。国の無為無策がまず責められよう。ただでさえ社会保障提供に後ろ向きな政府である。これまで以上の受給者の大きな声がなければ、政府が年金制度を改善させるはずがない。さらには、声を上げようにも複雑な年金制度が立ちはだかる▼政府は通常よりも2カ月近く遅らせて年金財政検証を発表した。どう見ても不十分な内容だが、制度は100年大丈夫とうそぶく。兵庫協会は年金問題を取り上げたクイズチラシを検討中と聞く。年金並びに社会保障制度全体を底上げするため、今一度声を束ねる機会としたい。(蓮)