兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2019年11月15日(1926号) ピックアップニュース

燭心

 来年度より始まる大学入試への英語民間試験制度が急遽見送りとなった。11月1日より受験生のID取得が始まろうとする前日の、それもおそらく夜の決定か。翌日1日の読売新聞は記事にできたようだが、朝日新聞は間に合わなかった。高校教師も、受験生も、超党派の議員もこぞって反対していた矢先の出来事。現場に混乱を起こす、受験生不在の政治判断だ▼それにしても萩生田文部科学大臣の責任は重大である。特にこの決定のきっかけとなった「身の丈」発言は、その立場を踏まえぬ重大問題。教育基本法4条には教育の機会均等がうたわれ「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地によって、差別されない」とする。明確に文部科学大臣失格である▼そもそも若者に英語力を要求するようになったのは約30年前からとか。民間試験の導入は国際社会で活躍する人材を育てる目的で、民主党政権が示した「グローバル人材育成戦略」をもとにしており、財界からの要求に応えたものであろう▼昨年6月経団連は「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」を示している。日本の大学は玉石混交で世界ランキングの順位を落としており、多様な能力を持つ人材の育成が不可欠としている。財界・企業の要求の焦りがここにある▼今日的に産官軍学連携の圧力が高まる中、学ぶことの意味、学問の自由の意義がいっそう重要となる(無)
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方