兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年11月25日(1927号) ピックアップニュース

「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会・市民学習会
歯科疾患の社会的要因と健康格差学ぶ
兵庫連絡会が結成10周年迎える

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相田潤先生(上)が、健康格差の背景とその対策を語った

 経済格差を健康格差につなげない--。協会などで構成する「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会は、今年で結成から10周年を迎えた。11月10日には、協会会議室で市民学習会「歯科は健康にとって『鉱山のカナリア』口から見える健康格差とその処方箋」を開催した。東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野准教授の相田潤先生を講師に、歯科医療関係者と市民ら60人が参加した。

口腔の健康格差生まない環境作りを
 相田先生は冒頭、世界で最も多い疾患は永久歯の未処置むし歯であり、日本でも4000万人が罹患していると紹介した。口腔の健康状態が悪いと、口腔機能のみならず、呼吸器疾患、心臓血管疾患、認知症、抑うつなどの全身疾患のリスクが有意に高まることや、睡眠時間が異常を来す、要介護状態に陥る危険が高まるなど、データを示しながら解説。歯科疾患は他の全身疾患の前に症状が現れることから、「鉱山のカナリア」であるとした。
 また、歯科疾患の健康格差の背景には、職業格差や所得格差、幼少期の環境など自己責任ではすまされない社会的決定要因があると指摘。その健康格差は単なる二極化ではなく、階段状の「社会的勾配」となってすべての人が影響を受けているものだとした。健康格差への対策として、禁煙やフッ化物洗口などの公衆衛生的手段を講じることで、だれもが健康になる環境を作ることが必要であるとした。
 冨澤洪基協会評議員が全日本民医連の『歯科酷書』から、経済的理由による未受診の果てに「口腔崩壊」に至った事例を紹介。連絡会として、経済的格差を健康格差につなげないよう、「いつでも、どこでも、だれでも」受診できる「保険でより良い歯科医療」を求める運動の重要性を訴え、11月28日に国会へ提出する「保険でより良い歯科医療を求める」請願署名への協力を訴えた。
学習会終了後には歯の無料健康相談も
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歯科の役員・会員10人が歯の健康相談に応じた

 終了後には、歯の無料健康相談を実施。10件の相談があり、学習会に参加した歯科医師10人の協力を得た。連絡会代表世話人の中村泰先生が閉会あいさつ、足立了平協会副理事長が司会を務めた。
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