兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年12月15日(1929号) ピックアップニュース

燭心

 中村哲さんが亡くなられた。テレビで「アフガンで銃撃され死亡」報道を見た時は、まさかの衝撃を受けた。卑劣なテロである。当人はこういう事態も覚悟はしておられただろうが、残念である。現地では多くの方が、涙ながらの追悼をされたという。謹んでご冥福をお祈りしたい▼哲さんなどと気軽に呼んではいけない偉大な人である。けれども、柔和な人柄に接すると、ついつい心の壁がなくなってしまう。戦乱のアフガンでも、その笑顔で人々の心をつかんでいったのであろう。医師でありながら、井戸を掘り、運河を作り、砂漠を耕地に変えていった。貧困をなくすことが、病気をなくし、戦乱をなくす最良の処方箋と信じたからである▼忙しい中でも、九条の会・兵庫県医師の会の講演に時間を割いて引き受けていただいた。米軍がアフガンへ軍事攻撃を仕掛け、日本が自衛隊を派遣した時、「有害無益」と国会で喝破された。憲法9条を守る重要性を訴えられたのが、昨日のことのように思い出される▼今年最後の燭心は、悲しい話題になってしまったが、哲さんの撒いた種は、今、アフガンの砂漠を緑の大地に変えつつあると聞く。彼の育てた人たちは、やがて、アフガンの次の世代を担っていくだろう。貧困と格差が健康を蝕んでいるのは、何もアフガンだけの話ではない。私たちの周囲にも迫ってきている。哲さんの志を形見分けいただいて、兵庫県保険医協会は、来年も頑張りたいということで、今年の締めくくりとしたい(星)
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