2020年1月25日(1931号) ピックアップニュース
燭心
日本の政治の行き詰まりはかなり激しいものとなっている。男女平等の欠如、若者の半数が誇りに思うことがないといい、65歳以上の高齢者の半数以上が生活苦を訴える。環境問題や核兵器問題も展望を示せていない▼萩生田文科相は「身の丈」発言の後も、高等教育支援の対象外となる新入生に対し「端境期なのでご理解を」と述べた。経済のグローバル化、非正規雇用化など財界・企業の論理に屈服し自ら招いた「少子化・人口減」に首を絞められている。「誰も取り残されない」社会の実現が政治の使命。それを放棄する姿勢は政治の退廃、敗北宣言である▼特に顕著なことは、物の価値観を「生産性」「効率性」「経済性」で推し量ることが徹底強化されていること。効率が悪く「価値」の低いものは「悪」とまでされる。学問の府である大学に対する資金削減、産官軍学に強化はその表れだ。医師の働き方においても5%から7%効率を上げるとするが、意味不明である▼豊かな社会とは何か。それは「誰も取り残されない」「誰も否定されない」社会ではないだろうか。国交省の2030年の日本の将来調査〝多様性社会シナリオ〟にはかなり立派なことが記されている▼生物学者福岡伸一氏は「真の多様性とは、違うものとの共存を受け入れるという、いわば利他的な概念」と述べる。政府は昨年、3年に1度の芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金を停止させた。多様性を認めないかたくなな姿勢だ。今の政治を如実に語る(無)