2020年2月25日(1934号) ピックアップニュース
第36回地域医療を考える懇談会
受療権脅かす指導許さない
2018年以降、生活保護指定医療機関に対する尼崎市の個別指導が急増。5年に遡り診療報酬の返還を迫られたことや、医師の医学的判断に踏み込むような指導が行われたこと等多くの問題点について、協会はこれまで市や厚生労働省へ、指導の問題点を明らかにするとともに改善を要請し、市に法的解釈の誤りを認めさせるなども実現してきた。
懇談会では、はらクリニック院長の原秀憲先生、指導を受けた尼崎医療生協潮江診療所所長の船越正信先生とひまわり医療生協田島診療所所長の三橋徹先生、尼崎医療生協病院のソーシャルワーカーの山上育子氏が話題提供。協会地域医療部長・尼崎支部副支部長の綿谷茂樹先生が司会と基調報告を務めた。
原先生は「個別指導の実際-立ち会い医師の立場から」をテーマに、個別指導の流れや主な指摘事項について報告。指導の際には訪問診療等の医療の必要性を医師がしっかり訴えること、日頃から診療録の記載通知を守り指導に備えることの重要性を強調した。
船越先生は、当初個別指導が「検査(健康保険法上の『監査』に該当)」の形で行われたと報告。市の実施通知の根拠条文にも、「第54条(検査の根拠条文)」が記載されていた上、指導の内容も「医療扶助に関する事務取扱の周知徹底を図る」ための個別指導ではなく、「検査」そのものであったと批判した。
また指導の中で、訪問診療を行っている患者について、市担当者から外来通院の継続を迫られたと述べ、医師の医学的判断に踏み込んで訪問診療の要否が判断されたことがあったと指摘。「市と医療機関は本来協力し合う関係であるはずが、査定ありきの高圧的な指導が行われてきた」と強調した。
生活保護医療担う医療機関への差別
三橋先生は、在宅時医学総合管理料を二つの医療機関で重複算定していた患者について、一方的に最大5年間の返還を求められたと報告。行政としてレセプトを突合しなかったにもかかわらず、突然医療機関にのみ責任を押し付けて自主返還を迫るのは問題だと訴えた。また、生活保護医療を多く担っている医療機関から個別指導の選定が行われたことは差別だとして、「当診療所の地域性を考えれば生活保護受給者の割合が高くなるのは当然」「医療機関にとって5年もの返還は医療機関経営への大きな打撃となり、結果として生活保護受給者への医療を萎縮させることにつながる」と強く批判した。
〝患者の受療権守ろう〟
山上氏は、患者には「いつでも必要かつ十分な医療サービスを、人としてふさわしいやり方で受ける権利(=受療権)」があると強調。医師が通院困難と判断した患者でも市のケースワーカーから訪問診療を不許可としたり、医師に相談せずに患者に「頻回受診」を控えるよう指導した事例を紹介し、受給者の受療権が脅かされていると訴えた。ディスカッションでは、指導相談に応じてきた弁護士が「生活保護法上、診療報酬の返還はあくまで任意にもかかわらず、返還することが当然かのように行われてきた」とフロア発言するなど、意見交換が行われた。