2020年3月05日(1935号) ピックアップニュース
燭心
新型コロナウイルス感染症が広がっている。今なすべきは適切な受診と検査、感染拡大の抑制、重症者への治療体制確保に全力を上げることだろう。ウイルスと闘う現場や他者への非難は後回しだ。幸い、国内の死亡者数はまだ少ないが、医療資源と体制が脆弱な発展途上国に広がれば、より大きな被害をもたらす▼一方で季節性インフルエンザも、日本国内だけで罹患者数はおよそ年間1000万人、死亡者数1000人、超過死亡者は約1万人と推計されている。世界では、飢餓人口は8億2千万人にも上り、毎日2万5千人(うち5歳以下は1万4千人)が飢えにより命を落としている。死亡原因の第一位だ。また、タバコが原因と思われる「煙害死」は年間10万人(うち受動喫煙死は1万5千人)、世界で600万人とされている。これほどの健康被害をもたらすタバコは、非喫煙者と喫煙者の「権利」やタバコ産業(税収2兆円)との利害調整の段階ではなく「絶対悪」の「公害」である▼ただ、ハーバード大学公衆衛生学のイチロー・カワチ教授はこう述べる。「タバコが原因の疾病や死亡は、個人の責任とされがちであり、大規模な宣伝と政府からの助成を受けながら莫大な利益を生み出している殺人産業のせいだとは認識されていない」。タバコ産業全体に対して、健康被害への責任を問うべきだろう▼世界のありようと社会の病理から健康を考え、巨悪を許さず、日常にある「救える死」に直面する人々を忘れてはならない(空)