兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年3月25日(1937号) ピックアップニュース

燭心

 大阪市は2017年12月「認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」を国内で初めて制定した。今後「徘徊老人」を「外出中に道に迷った人」などと言い換える。認知症の人の外出はそれぞれ目的や理由があるはずで、周りの見た目の判断で危険な行動、危険な存在とすることは、思いやりや人権意識に欠ける考えであるとしている。朝日新聞も2018年3月からこのような理由で「徘徊」という言葉を使わない方針とした▼昨年4月日本福祉大学の学生が、認知症啓発を目的に「にっぷくにこにこカルタ」を商品化した。カルタという遊びを通じて子どもから大人までの多くの人に「認知症」を理解してもらい、偏見をなくすこととしている。㋚「財布どこ?」一緒に探そうおばあちゃん㋮間違っていても話を聞いてみよう㋲もう少し待ってね、お昼ご飯▼超高齢社会を迎え「認知症」が重要視され、政府も数値目標を掲げ「予防」を強調する。「予防」という言葉の裏には「自己責任」がついて回る。その目的は、個人個人の幸福ではなく、社会保障費の節約である▼加齢に従いさまざまな能力が低下する。筋力は低下し関節も摩耗する。骨格は脆弱となり、平衡感覚も低下する。個人差はあるが精神活動もしかり。機能低下は、程度の差はあるものの必ず進行する。認知機能も含め機能回復の努力も大事だが、低下した機能を誰がどのように補うか、またその人らしい充実した尊厳ある生活ができる社会づくりをどう実現するかだ。(無)
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