兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年4月15日(1939号) ピックアップニュース

燭心

 新型コロナウイルス感染の拡大が加速する中、安倍首相はついに緊急事態宣言を出した。まだまだと出し惜しみをした結果、待ちわびたマスコミはこぞって特集を組み、国民の人権を著しく制約する危険性などはわきに置いて歓迎の嵐である。特に、医療崩壊を懸念する医師たちが連日テレビ画面から強い規制の早期実施を呼び掛けていたことから、国民の耳にはこの宣言が希望に満ちた言葉として届いたかもしれない▼しかし、今回のような金銭の手当てがない緊急事態宣言は地獄へと続く道になる可能性を指摘する声も少なくない。十分な補償もないままに営業停止を求められる会社のしわ寄せは、労働者に大きなダメージを与える。また、閉鎖に耐えきれない飲食店や零細事業者は営業を続けざるを得ず、感染予防の効果を半減させてしまうだろう。自粛と補償は一体でなければならない▼医療と同様、政治にもエビデンスに基づく発動が求められる。クラスターの発生以来国民に自粛を求めてきたにもかかわらず、感染拡大を抑えきれなかった理由を、法規制のなさに求めたとしたら浅はかだ。街に繰り出す若者が後を絶たなかったのは営業する店があるからだ。店が営業を続けるのは、閉店が即自分の首を絞めるからだということは、ワイドショーのインタビューからも理解できる▼対策に必要なのは、十分な休業補償と全国民への現金給付、消費税ゼロ化、さらに休むことのできない医療職などへの危険手当を含む大幅な報酬増である(九)
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