2020年6月05日(1943号) ピックアップニュース
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政府の責任で医療機関へ十分な補償を
概算請求を厚労省へ要請
新型コロナウイルス感染拡大のもとで、患者の受診抑制が拡大し、多数の医療機関で患者数が減少。厳しい経営が強いられている。協会は、医療機関の経営補償を求め、前年度の診療報酬支払い額に基づく概算請求を認めるよう、政府に要望を行った。これまでに、政府はさまざまな支援制度を創設しているが、その利用には多くのハードルがあり、協会は会員が制度を利用できるようサポートするとともに、制度の改善を求めている。
医療提供体制と地域医療を守るため、安定した医療機関経営の補償を求め、協会は5月23日の第1112回理事会において、「前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めることを求める」要請書を採択した。
要請書では、協会が昨月実施した「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート調査」結果をもとに、昨年同時期に比べて、受診患者数が減ったと回答した医療機関は、病院と医科診療所で8割近く、歯科診療所でも約半数に上るという実態を紹介。一方で、マスクなどの個人防護具や消毒液なども品薄となっていることから購入価格が上昇、発熱患者のための動線分離等の設備投資により、医院の経費は増加しており、現状では感染「第2波」発生時に、現場の医療機関の経営が耐えられないと説明している。
アンケートには、「この状況が3カ月以上続くと経営がかなり厳しくなる」「当院は精神科だが、『コロナが不安』という患者さんが増えている」「入口に『発熱などの方は入らずにまず連絡を』と貼っているが、それでも入ってくる発熱患者さんがいます。その際、医師一人で対応。院長が一人で受付、診察、会計をします。そのあと、診察室の消毒。患者一人に対し、1時間ほどかかりますので、負担が大きいです」などの経営上の深刻な声が寄せられている。
協会は、感染拡大を防止するには一般の診療所を含めた医療提供体制の維持と、充実こそが必要不可欠であると訴えていく。政府は、大規模災害時と同様に、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間、前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めるべきである。
しかし、書類作成が煩雑なことや、助成上限額が8330円と低いため医院の負担が大きくなる場合があるなどの問題点がある。利用しづらいとの声を受け、厚労省は手続きの簡素化や助成上限額の引き上げ(1万5000円を予定)などを検討している。
しかし、給付基準は、月間事業収入が前年同月比50%以下に減少した場合、という厳しい条件が課されており、給付へのハードルは非常に高い。また、オンライン申請を基本とし、困難な方向けの「申請サポート会場」が開設されているが、完全事前予約制となっていることや、受付を期間限定とする地域や開設が6月末という地域もあり、利用しやすい制度とは言えない。
いずれの制度においても、手続きの煩雑さ、支給まで時間がかかる点など、新型コロナウイルス感染症拡大により収入が急減した医療機関の実態に寄り添った支援策とは言えない。緊急事態宣言が解除されても、患者数の減少など経営問題は長引く可能性が極めて高いのが現状である。
協会は、これらの制度の改善を求めるとともに、会員が利用できるようサポートを行っている。
制度利用についてのお問い合わせは、電話078-393-1805税経部まで
雇用保険被保険者である職員を対象としています。被保険者でない職員は「緊急雇用安定助成金」の対象となりますが、助成内容等は雇用調整助成金と同様です。
持続化給付金については〈表2〉をご参照ください。
【対象】最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少した方
【限度額】6000万円(運転資金15年以内、設備資金20年以内、うち据置期間5年以内)
【金利・担保】基準金利▲0.9%(1.36%→0.46%)、4年目以降基準金利(利下げ限度額3000万円)・無担保
特別利子補給制度も有
要件を満たせば実質無利子になる場合があります。
〈対象〉個人事業主(従業員5名以下):要件なし、小規模法人:売上高15%以上減少、中小企業者:売上高20%以上減少
〈期間〉借入後当初3年間無利子
〈補給対象上限〉3000万円
【問い合わせ先】日本政策金融公庫 事業資金相談ダイヤル0120-154-505(平日)、0120-112-476(土日)
(2)新型コロナウイルス感染症対応資金
【対象】セーフティネット保証4号・5号・危機関連保証の市町認定を取得した者
【限度額】設備資金・運転資金・借換資金(信用保証付融資のみ)3000万円(10年以内措置5年以内)
【金利・担保】個人事業主(従業員5名以下)で売上高の減少が5%以上→当初3年間0%(4年目以降0.70%)(保証料ゼロ)、中小業者で売上高の減少が15%以上→同上、中小企業で売上高の減少が5%以上15%未満→0.70%(+保証率0.425%)、無担保
【期限】2020年12月31日保証申込受付分まで
【問い合わせ先】取扱金融機関または兵庫県産業労働部地域金融室(078-362-3321)
(3)独立行政法人福祉医療機構福祉貸付事業(経営資金)
【対象】患者や従業員が新型コロナウイルスに感染したため、事業を縮小・停止した場合など
【限度額】運転資金 診療所4000万円、病院7.2億円(15年以内、据置5年以内)
【金利・担保】5年間は1億円まで無利子(1億円超の部分は0.2%)、6年目以降0.2%、無担保
【問い合わせ先】福祉医療機構大阪支店 医療審査課(06-6252-0219)
(4)小規模企業共済特例緊急経営安定貸付
【対象】最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模企業共済の貸付資格を有する契約者の方
【限度額・期間】2000万円(500万円以下の場合は4年、505万円以上の場合は6年〈いずれも措置1年以内〉)(契約者が納付した掛金の総額の7~9割の範囲内)
【金利・担保】無利子・無担保
【問い合わせ先】(独)中小企業基盤整備機構 共済相談室(050-5541-7171)※この他にも、掛金の納付期限の延長などの特別措置を実施
【対象となる国税】2020年2月1日から2021年1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼすべての税目(すでに納期限が過ぎている未納の国税についてもさかのぼって利用可能)
【申請手続】e-Taxや郵送による申請。2020年6月30日または納期限のいずれか遅い日まで
【問い合わせ先】大阪国税局猶予相談センター(電話0120-527-363)
新型コロナウイルス感染症の影響で、医療機関の患者数が減少している事態を受け、協会は5月23日に下記要請書を採択し、関連機関に送付した。以下に全文を掲載する。
厚生労働大臣 加藤勝信 様
さて、私たち医療機関は政府による緊急事態宣言発令後も政府の求めに応じ事業を継続し、日々新型コロナウイルス感染のリスクに晒されながらも、歯科も含む一般の診療所では慢性疾患の管理や適切な新型コロナウイルス感染症が疑われる患者の院内トリアージ、病院では新型コロナウイルス感染症が疑われる患者の検体採取や実際の治療などに全力を尽くしてきました。
しかし、新型コロナウイルス感染を恐れる患者の受診抑制が拡大しており、全体として患者数は減少しております。私たちが昨月実施した「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート調査」では、昨年同時期に比べて、受診患者数が減ったと回答した医療機関は、病院において77.5%、医科診療所において79.3%、歯科診療所において46.7%となっています。病院では全体の6割で10~30%、医科診療所では5割強で10~30%患者が減少していますし、医科診療所では16.1%の医療機関が半分以上減少しています。
一方、マスクなどの個人防護具や消毒薬等の入手も平時に比べ大変コスト高になっていますし、一部の診療所や病院では発熱外来の開設の為の設備投資費用も増加しています。
新型コロナウイルス感染症拡大による患者減少に伴う収入減少と、費用の増加が医療機関の経営を極めて困難なものにしています。
我が国において国は国民に対し憲法25条に規定された生存権の一つとして受療権を保障するとともに、医療提供を民間を含めた医療機関に担わせており、保険医療機関は憲法が定めた生存権の具体的保障を役割とする公益医療の提供者です。この事業の継続が危うくなれば、延いては国民の生存権保障が脅かされることになります。
今後、新型コロナウイルス感染症の「第2波」が訪れるともいわれる状況において、引き続き医療崩壊を食い止めながら適切な医療を提供するためには一般の診療所も含めた医療提供体制の維持と充実が欠かせません。つきましては医療機関の経営を持続可能なものとするため、新型コロナウイルス感染症拡大が収束するまでの間、大規模災害時同様、前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めるよう要望します。
医療提供体制と地域医療を守るため、安定した医療機関経営の補償を求め、協会は5月23日の第1112回理事会において、「前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めることを求める」要請書を採択した。
要請書では、協会が昨月実施した「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート調査」結果をもとに、昨年同時期に比べて、受診患者数が減ったと回答した医療機関は、病院と医科診療所で8割近く、歯科診療所でも約半数に上るという実態を紹介。一方で、マスクなどの個人防護具や消毒液なども品薄となっていることから購入価格が上昇、発熱患者のための動線分離等の設備投資により、医院の経費は増加しており、現状では感染「第2波」発生時に、現場の医療機関の経営が耐えられないと説明している。
アンケートには、「この状況が3カ月以上続くと経営がかなり厳しくなる」「当院は精神科だが、『コロナが不安』という患者さんが増えている」「入口に『発熱などの方は入らずにまず連絡を』と貼っているが、それでも入ってくる発熱患者さんがいます。その際、医師一人で対応。院長が一人で受付、診察、会計をします。そのあと、診察室の消毒。患者一人に対し、1時間ほどかかりますので、負担が大きいです」などの経営上の深刻な声が寄せられている。
協会は、感染拡大を防止するには一般の診療所を含めた医療提供体制の維持と、充実こそが必要不可欠であると訴えていく。政府は、大規模災害時と同様に、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間、前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めるべきである。
支援制度にも 多くの問題点
雇用調整助成金
マスコミ報道等でも注目される雇用保険の「雇用調整助成金」は、事業主が職員を休ませる際に支払いが義務付けられている「休業手当」の一部を、助成金として支給することで雇用の安定を図ることを目的としたもの。新型コロナ疑いや、診療時間の短縮等で職員を休ませた際に利用できる。しかし、書類作成が煩雑なことや、助成上限額が8330円と低いため医院の負担が大きくなる場合があるなどの問題点がある。利用しづらいとの声を受け、厚労省は手続きの簡素化や助成上限額の引き上げ(1万5000円を予定)などを検討している。
持続化給付金
「持続化給付金」は、個人事業者は最大100万円まで、中小法人では最大200万円までの給付金を受けられる制度である。しかし、給付基準は、月間事業収入が前年同月比50%以下に減少した場合、という厳しい条件が課されており、給付へのハードルは非常に高い。また、オンライン申請を基本とし、困難な方向けの「申請サポート会場」が開設されているが、完全事前予約制となっていることや、受付を期間限定とする地域や開設が6月末という地域もあり、利用しやすい制度とは言えない。
各種融資制度
資金繰りに関しては、政策金融公庫などで特別融資制度が創設されており、事業収入の減少などの条件を満たせば実質無利子となる場合もあるが、収束の見通しが分からない中、負債を抱えてしまうことへの不安もある。いずれの制度においても、手続きの煩雑さ、支給まで時間がかかる点など、新型コロナウイルス感染症拡大により収入が急減した医療機関の実態に寄り添った支援策とは言えない。緊急事態宣言が解除されても、患者数の減少など経営問題は長引く可能性が極めて高いのが現状である。
協会は、これらの制度の改善を求めるとともに、会員が利用できるようサポートを行っている。
制度利用についてのお問い合わせは、電話078-393-1805税経部まで
表 主な制度の一覧とそれぞれの問題点
税経部より 国の各種助成制度等のご案内
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、雇用調整助成金〈表1〉の特例措置や、持続化給付金〈表2〉の設立などが実施されています。制度のポイントや手続き等について解説します。(今回の解説は5月28日時点のものであり、今後変更がある場合があります。詳細は協会ホームページ、協会事務局 電話078-393-1805税経部までお問い合わせください・ » 支援制度の研究会の案内はこちら)雇用調整助成金・持続化給付金
雇用調整助成金は4月1日~6月30日までの期間を緊急対応期間として〈表1〉の対応となっています。雇用保険被保険者である職員を対象としています。被保険者でない職員は「緊急雇用安定助成金」の対象となりますが、助成内容等は雇用調整助成金と同様です。
持続化給付金については〈表2〉をご参照ください。
融資制度
(1)日本政策金融公庫新型コロナウイルス感染症特別貸付【対象】最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少した方
【限度額】6000万円(運転資金15年以内、設備資金20年以内、うち据置期間5年以内)
【金利・担保】基準金利▲0.9%(1.36%→0.46%)、4年目以降基準金利(利下げ限度額3000万円)・無担保
特別利子補給制度も有
要件を満たせば実質無利子になる場合があります。
〈対象〉個人事業主(従業員5名以下):要件なし、小規模法人:売上高15%以上減少、中小企業者:売上高20%以上減少
〈期間〉借入後当初3年間無利子
〈補給対象上限〉3000万円
【問い合わせ先】日本政策金融公庫 事業資金相談ダイヤル0120-154-505(平日)、0120-112-476(土日)
(2)新型コロナウイルス感染症対応資金
【対象】セーフティネット保証4号・5号・危機関連保証の市町認定を取得した者
【限度額】設備資金・運転資金・借換資金(信用保証付融資のみ)3000万円(10年以内措置5年以内)
【金利・担保】個人事業主(従業員5名以下)で売上高の減少が5%以上→当初3年間0%(4年目以降0.70%)(保証料ゼロ)、中小業者で売上高の減少が15%以上→同上、中小企業で売上高の減少が5%以上15%未満→0.70%(+保証率0.425%)、無担保
【期限】2020年12月31日保証申込受付分まで
【問い合わせ先】取扱金融機関または兵庫県産業労働部地域金融室(078-362-3321)
(3)独立行政法人福祉医療機構福祉貸付事業(経営資金)
【対象】患者や従業員が新型コロナウイルスに感染したため、事業を縮小・停止した場合など
【限度額】運転資金 診療所4000万円、病院7.2億円(15年以内、据置5年以内)
【金利・担保】5年間は1億円まで無利子(1億円超の部分は0.2%)、6年目以降0.2%、無担保
【問い合わせ先】福祉医療機構大阪支店 医療審査課(06-6252-0219)
(4)小規模企業共済特例緊急経営安定貸付
【対象】最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模企業共済の貸付資格を有する契約者の方
【限度額・期間】2000万円(500万円以下の場合は4年、505万円以上の場合は6年〈いずれも措置1年以内〉)(契約者が納付した掛金の総額の7~9割の範囲内)
【金利・担保】無利子・無担保
【問い合わせ先】(独)中小企業基盤整備機構 共済相談室(050-5541-7171)※この他にも、掛金の納付期限の延長などの特別措置を実施
国税の納税猶予
【対象者】次のいずれも満たす方 (1)2020年2月以降の任意の期間(1カ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること、(2)一時に納税を行うことが困難であること【対象となる国税】2020年2月1日から2021年1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼすべての税目(すでに納期限が過ぎている未納の国税についてもさかのぼって利用可能)
【申請手続】e-Taxや郵送による申請。2020年6月30日または納期限のいずれか遅い日まで
【問い合わせ先】大阪国税局猶予相談センター(電話0120-527-363)
新型コロナウイルス感染症の影響で、医療機関の患者数が減少している事態を受け、協会は5月23日に下記要請書を採択し、関連機関に送付した。以下に全文を掲載する。
2020年5月23日
厚生労働大臣 加藤勝信 様
前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めることを求めます
兵庫県保険医協会 第1112回理事会
拝啓 貴職におかれましては、新型コロナウイルス感染症対策にご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、私たち医療機関は政府による緊急事態宣言発令後も政府の求めに応じ事業を継続し、日々新型コロナウイルス感染のリスクに晒されながらも、歯科も含む一般の診療所では慢性疾患の管理や適切な新型コロナウイルス感染症が疑われる患者の院内トリアージ、病院では新型コロナウイルス感染症が疑われる患者の検体採取や実際の治療などに全力を尽くしてきました。
しかし、新型コロナウイルス感染を恐れる患者の受診抑制が拡大しており、全体として患者数は減少しております。私たちが昨月実施した「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート調査」では、昨年同時期に比べて、受診患者数が減ったと回答した医療機関は、病院において77.5%、医科診療所において79.3%、歯科診療所において46.7%となっています。病院では全体の6割で10~30%、医科診療所では5割強で10~30%患者が減少していますし、医科診療所では16.1%の医療機関が半分以上減少しています。
一方、マスクなどの個人防護具や消毒薬等の入手も平時に比べ大変コスト高になっていますし、一部の診療所や病院では発熱外来の開設の為の設備投資費用も増加しています。
新型コロナウイルス感染症拡大による患者減少に伴う収入減少と、費用の増加が医療機関の経営を極めて困難なものにしています。
我が国において国は国民に対し憲法25条に規定された生存権の一つとして受療権を保障するとともに、医療提供を民間を含めた医療機関に担わせており、保険医療機関は憲法が定めた生存権の具体的保障を役割とする公益医療の提供者です。この事業の継続が危うくなれば、延いては国民の生存権保障が脅かされることになります。
今後、新型コロナウイルス感染症の「第2波」が訪れるともいわれる状況において、引き続き医療崩壊を食い止めながら適切な医療を提供するためには一般の診療所も含めた医療提供体制の維持と充実が欠かせません。つきましては医療機関の経営を持続可能なものとするため、新型コロナウイルス感染症拡大が収束するまでの間、大規模災害時同様、前年度の診療報酬支払額に基づく概算請求を認めるよう要望します。
敬具