2020年6月15日(1944号) ピックアップニュース
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歯科でも影響大国は支援拡充すべき
伊丹市・かわむら歯科医院 川村 雅之先生
新型コロナウイルス感染症の影響で、歯科医療機関でも患者数の減少、特に初診の患者さんや、SPT(歯周病安定期治療)のように定期的な受診が必要な患者さんの受診が減少していると感じています。治療時に患者さんとの距離が近くなるので、「歯科で感染してしまうのでは」と言われたりしますが、実際には歯科医師や歯科職員の感染者は少なく、また歯科治療での新型コロナ感染も報告されておらず、完全な風評被害だと思います。
重症化しての受診目立つ
受診抑制は、患者さんの口腔状態を悪化させています。歯周病の定期受診の患者さんが減少した一方、抜髄や、感染根管処置、膿瘍切開などといった、重症化したう蝕の患者さんが目立ちます。これまで、初期段階での治療、重症化予防が宣伝され、国民の中にも定着してきたと感じていたところでしたが、20年以上昔にさかのぼった感があります。特に、訪問歯科診療での高齢者への口腔ケアができなくなってしまうと、一般の方以上に健康へのリスクは高まり、誤嚥性肺炎など、命が危ぶまれる事態を引き起こすのではと、非常に懸念しています。問題なのは、厚生労働省の姿勢です。厚労省通知では、感染防止の観点から、歯科治療は応急処置にとどめるよう呼びかけられました。しかし歯科では前回改定より院内感染防止が初診料の算定でも義務付けられて届出は95%を超えるなど、ほとんどの歯科医療機関で感染防止対策を実施しています。厚労省は安心して歯科を受診するよう呼びかけるべきです。それなのに、厚労省が通知を発出し、長期化の中でも訂正しないことは許せません。マスコミなどの宣伝の影響もあり、重症化や風評被害の事例が、協会にも多く寄せられています。すぐに撤回するべきです。
消費税増税の上にコロナが追いうち
複数ある融資制度についても、日本政策金融公庫の特別貸付などは、申請から実際に貸し付けられるまで、人によっては3カ月程度という非常に長い時間がかかります。資金がショートするなど、厳しい医療機関も出ているのではないでしょうか。政府はもっとスピード感を持って対策にあたるべきです。また、収支を前年度比較で調べると、新型コロナによる収入減のほかにも金パラの暴騰や、消費税増税の影響が大きいことが分かりました。経営が非常に厳しい状況の上に、新型コロナによる受診減少が加わったのです。政府は、消費税率を元に戻す、金パラの「逆ザヤ」を即時解消するなど、支援を抜本的に強めるべきです。
協会は政府に対し、診療報酬概算請求を認めるよう要請書を提出するなど、働きかけを強め、新型コロナ対応で刻々と変化する制度についての情報を発出しています。これからも、現場の矛盾を国に訴えていくこと、雇用や融資に関する研究会や相談会にも力を入れていこうと思います。