2020年6月25日(1945号) ピックアップニュース
燭心
西遊記の登場人物である孫悟空は、如意棒 と觔斗雲 を用い、天界で大暴れしたため、釈迦により五行山に封印された。それから500年後、三蔵法師により禁を解かれ、天竺へ取経の旅に出る▼三蔵法師の弟子となってからも、悟空は平気で悪人を殴り殺すなどまるで反省した様子がなかった。その時に頭に付けられた金輪の名を緊箍児 といい、三蔵法師がお経を唱えて、悟空の乱暴を戒めたとされる▼悟空にとってはさぞかし邪魔だったことだろう。過去の行いから仕方ないと考えたか、なぜこんな締め付けにあうのだと反発したことだろう。前者は反省した場合、後者は反省が薄い場合である。悟空も始めのうちは金具を外そうと足掻くが、やがて反省の度を深めていく▼これは国政をつかさどる為政者と、彼らを縛っている憲法の関係に通ずるところがあるのではないか。現憲法は、第二次世界大戦の反省から作られた、不戦の誓いである。為政者が、真に過去を反省していなければ、なぜこんなに窮屈なのかと感じ、押し付けだとか不合理だとか、何かと理由をつけて憲法を変えようとする。要は前の大戦をどう考えるかである。無反省であれば、同じ過ちを繰り返し、そのつど憲法に締め付けられる▼為政者にとって憲法が邪魔だというのは、裏を返せば現憲法が機能していることの証である。真に反省していれば、締め付けだとは感じないであろう。すべての為政者には、悟空のように過去の誤りを反省していただきたいものである。(蓮)