兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年6月25日(1945号) ピックアップニュース

六ヶ所再処理工場や新型原発研究など
原発に固執する政府に抗議

 協会環境・公害対策部では、原発に固執し、核燃料サイクルや新たな原子炉の研究を進めようとする政府に対し、抗議声明やパブリックコメントの提出を行っている。

六ヶ所再処理工場規制基準適合に抗議
 5月23日の第1112回理事会では、青森県六ヶ所村の再処理工場について、原子力規制委員会が安全対策の基本方針が新規制基準に適合するとの審査書案を了承したことに対し、抗議声明を発表した。同工場は、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再利用できるようにするという、国が推進する「核燃料サイクル」を担う中核施設である。
 しかし、工場で取り出した燃料を使用するはずであった高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉が決定しているため、代わりにプルトニウムとウランの混合燃料である「MOX燃料」を製造し、「プルサーマル発電」に使用するとしている。これは現在の原発(軽水炉)で、反応性の高いプルトニウムを混合した燃料を使用して発電を行うというもので、非常に危険な発電方法である。
 また、使用済み核燃料を再処理することにより、毒性の強い放射性廃棄物が何倍にも増加するが、廃棄物の処分方法はいまだに確立していない。加えて、完全操業時には安全性が問題視されているトリチウムの年間排出量は福島第一原発事故でタンクに蓄積されている処理水の総量の10倍以上にも上るとされる。
 声明では、これらの問題点を紹介し、再処理に要する経費は膨大で採算性も全くなく、多角的に見ても核燃料サイクルの破綻は明らかであると指摘。命と健康をまもる医師・歯科医師として、核燃料サイクルの放棄と、「原発ゼロ」のエネルギー政策への転換を求めている。6月12日には、原子力規制委員会が実施するパブリックコメントにも同様の意見を提出した。
 また、4月24日には、日本原子力機構が大洗研究所(茨城県)で研究を進めようとしている新たな原発「高温ガス炉」について、原子力規制委員会が新規制基準に適合しているとしたことに対し、安全性に懸念があるとする意見を提出した。
原発事故汚染水処理パブリックコメント提出へ
 福島第一原発事故により発生した汚染水の処分方法について、経済産業省が意見募集を行っている。
 原発事故で発生した大量の汚染水はALPS(多核種除去設備)で処理を行っているが、それでもなおトリチウムなどの放射性物質を含んでいる。このため現状では処分ができず、「多核種除去設備等処理水」として、福島第一原発の敷地内に保管されている。
 この「処理汚染水」の取扱いをめぐっては、今年2月、経済産業省に設置された小委員会が、海洋放出が現実的であり、確実に実施できるとする報告書をまとめた。しかし、これまでの地元の説明会では、漁業関係者をはじめ、多数の住民から反対の声が相次いでいる。
 また、ALPS「処理汚染水」の7割は、ストロンチウムなど、トリチウム以外の放射性物質が基準を超えて含まれていることも明らかとなっている。
 協会は、政府および東京電力は加害者として、被害者に補償を行うとともに原発ゼロ政策に転換すること、国民の不安の声に耳を傾け最新の技術を用いて安全性を検証した上で結論を出すことなどを求める意見を提出する予定である。会員の皆さまも、ぜひ経済産業省へ意見をお寄せいただきたい。
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意見提出にぜひご協力ください
 意見公募は、7月15日まで。経済産業省のウェブサイトで行われている。詳細は、「ALPS 意見公募」で検索。

https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620220008&Mode=0



 国会に種苗法改正法案が提出、審議されたことを受け、協会は5月23日、第1112回理事会にて下記の声明を採択し、関係機関に送付した。同法案は今国会での成立が見送られ、継続審議となった。

2020年5月23日

声明
種苗法「改定」法案の廃案を求める

兵庫県保険医協会
第1112回理事会

 新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療体制の整備や感染拡大防止、休業による損失補償をどう行うかが喫緊の課題となっている今国会で、「種苗法改正案」が提出されている。この法案は、これまで農家に原則として認められてきた登録品種の自家増殖を原則、許諾制とするものだ。
 農業者らでつくる「日本の種子を考える会」は、この法律が成立すれば、農家のタネ取りの権利が著しく制限され、許諾手続・費用等圧倒的多数の農家に大きな負担が課せられることとなり、地域の農業の衰退を招きかねないと、強く懸念を表明している。そして、本法案は、農業競争力強化支援法や2017年11月の農水省事務次官の通知に示されている公的な種苗事業を民間に移すという路線のもとに、事実上多国籍企業にその権利を移そうとしていることに根源的な問題があると指摘している。
 食は、いのち・健康の基本であり、日本の農業を維持・発展させることは、国民の命・健康を守ることにつながる。新型コロナウイルス感染症は国内の農業を守る重要性を明らかにしているが、本法案は完全に逆行した政策である。2018年4月の種子法廃止に続く暴挙であり、食糧自給、国家防衛戦略上の観点からも許しがたい。
 われわれは、いのちと健康を守る医療者として、日本の農業を衰退させる懸念のある本法案の見送りではなく、廃案と種子法の復活を求める。
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