兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年7月05日(1946号) ピックアップニュース

燭心

 「君の首はそんなに高いのか?」30年以上も前の話。赤字経営に悩む公立病院に限らず、機器購入にあたっては相応の理由とそれが生み出す収入や経費など綿密な資料を作成し、わが診療科ひいては病院全体にとっていかに有用であるか経営陣に説かなければならない▼当時、私にはどうしても購入したい診療器材があり、徹夜で分厚い申請書類を書き上げた。定年間近の老部長はその書類を手に「わしの首をかけて交渉する」と、意気揚々と部屋を出て行ったのだが、面談の席で冒頭の言葉を言われたという▼いつ辞めてくれてもいいんだ、大赤字の診療科だから病院としてもその方が助かる、などさんざん嫌味を浴びせられあえなく撃沈。自意識などみじんも感じない好々爺だったが、自分がいかほどの価値をもって生きているのかを知らされたと、退職祝いの席で話されたことを思い出す▼さて、国会が閉会した。コロナ危機にかき消されたが、桜を見る会、高検検事長の定年延長と不祥事、元法相と議員夫妻の違法選挙など数々の疑惑に関して、首相の説明責任が焦点になるはずだった。当の宰相は、プロンプター越しに「私の責任において」「真摯に向き合い説明責任を果たす」などの本来は重い言葉を、軽々しい口調で連発する。そこに綿密な裏付けやまっとうな理屈などない。あるのは国民を見下す傲慢さと自己愛だけか▼あなたの首がなんぼのもん? と言いたくもなるが、その首の価値を決めるのは選挙しかないと自覚したい(九)
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