2020年7月05日(1946号) ピックアップニュース
歯科政策研究会
歯科医療費の総枠拡大を国民運動に広げよう
宇佐美先生は、歯科診療報酬の歴史的経緯を概説。「歯科診療報酬は、長年にわたり公的医療の中に全面的に取り入れられない状態が続いている。1960年の皆保険発足後も欠損補綴の歯数制限や材料機器の制限など、制限診療が横行してきた」と厚生労働省の歯科医療政策の問題点を指摘。「疾病の自己責任論や受益者負担論が医科以上に強く、現在に至るまで歯科医学の進歩を保険診療に導入するテンポを極力遅くするか、まったく取り入れない状況が放置されている」と、政府の歯科医療政策を批判した。
さらに講師は、低診療報酬の根本的原因として「補綴治療の低評価」に言及。「歯が欠けたり、なくなったりした場合にクラウンや入れ歯等の人工物で補うという、歯科医師と技工士以外にできない歯科治療の基本となる技術料点数が極めて低く、また範囲も狭い現状は極めて不当」「2000年代からの『か初診』施設基準の導入に始まる安上がりの『長期維持管理路線』も改善が急務」とした。
新型コロナウイルス問題では、「不要不急の歯科治療の延期を求める4月6日の厚労省通知で、患者が激減した歯科医療機関は大きな打撃を受けている。今後、密を避けるためのコスト増と、減収にどのように対処するのか、協会・保団連の取り組みが重要になる。『保険でより良い歯科医療を』連絡会をはじめに、国民と結びついたいっそうの運動の発展が求められている。窓口負担軽減の取り組みとセットになった歯科医療費総枠拡大のうねりを起こしてほしい」と呼びかけた。
参加者からは「いつでも、どこでも、誰でもが受けられる医療を目指すべき。歯科から国民に訴える運動が大事だ」「市民向けのシンポジウムなどで歯科医療についての正しい知識の普及や啓蒙活動が必要では」などの意見が出された。