2020年9月25日(1953号) ピックアップニュース
燭心
テニスの4大大会である全米オープンで大坂なおみが快挙を成し遂げた。その大会で彼女は、警察官に殺された7人の黒人の名前をそれぞれプリントした7枚の黒いマスクを用意し、試合ごとにマスクを変えて登場した。決勝まで勝ち上がればすべてのマスクをつけることができる。世界中のテニスファンだけでなくマスコミにも注目され、黒人差別についての議論が巻き起こるだろうという目論見通りにことは運び、ついに彼女は優勝をもぎ取った▼女子テニス協会は積極的にこれを支援し、基本的にスポーツの政治利用を認めない国際テニス連盟もこれを黙認した。ナイキは公式ホームページで「あなたは自分の力で勝利し、多くの人のためにプレーした」と称賛を送った▼一方、派閥の力を借りて勝利し、安倍首相を継承するために闘った、菅自民党新総裁。安倍氏の何を継承するというのか。多くの国民が納得していないモリ・カケ、桜、文書廃棄改ざん、沖縄基地問題、武器爆買いなどの負の遺産までも継承するというのなら、これほど国民を愚弄した話はない▼自民党総裁選は事実上、総理大臣を選ぶ選挙で国のありようを確実に左右するが、姑息な策と数の力であっけなく終わった。明確な行動でスポーツ界の意識を改革した大坂に対し、改革を口にしながら既存の政治路線を継承する新総裁。BLM運動を体現して優勝した大坂なおみの緻密で繊細なコメントとプレーに魅了された後だけに、総裁選の何と陳腐に見えることか(九)