2020年10月15日(1955号) ピックアップニュース
新型コロナ診療・検査体制に関するアンケート結果
厚労省や県は医療機関の不安を解消せよ
厚生労働省・兵庫県が新型コロナウイルス感染症の検査や診療を担う「診療・検査医療機関(仮称)」を整備する方針を固めたことを受け、協会は発熱患者を診る機会が多いと思われる標榜科2151会員医療機関を対象に「新型コロナウイルス感染症等の診療・検査体制に関するアンケート調査」を実施。465件の回答を得た。「診療・検査医療機関(仮称)」の指定について、「受ける方向で検討中」が18%にとどまり、その理由として感染リスクや受診抑制が約7割を占めるとの結果となった。9月26日には、これらの結果をマスコミにリリース。神戸新聞や毎日新聞、しんぶん赤旗が報じた。
このアンケートは、厚生労働省が9月4日の事務連絡で「発熱患者等が、......かかりつけ医等の地域で身近な医療機関等を相談・受診し、必要に応じて検査を受けられる体制...を......整備する」としたこと、兵庫県は250カ所の一般診療所を新型コロナウイルス感染の検査や診療を担う「診療・検査医療機関(仮称)」と指定する方針を固めたことを受け、指定に応じる医療機関数を推計するとともに、実際の指定にあたって必要な施策等を明らかにするために実施したもの。
アンケートでは、「診療・検査医療機関(仮称)として指定を受けますか」との問いには「受けない方向で検討中」との回答が46%で最も多く、「受ける方向で検討中」との回答は18%にとどまった。一方、「現状では判断できない」との回答も34%に上っており、厚生労働省や県から具体的な情報が提供されていないことが背景にあると思われる。また、「受ける方向で検討中」と回答した会員の割合を年齢別にみると50歳未満では27%に上ったが、50歳代で21%、60歳代で15%、70歳以上で14%と新型コロナウイルスに感染した際の重症化リスクが高い高齢医師層で低くなるなど、開業医の高齢化が進む中で、政府の方針に課題があることが浮き彫りになった。
9月26日のマスコミ報告会では、西山裕康理事長がこれらの結果について報告。「今回のアンケートでは、県の予定数より多くの医療機関が診療・検査医療機関としての指定を受ける可能性がある。一方で開業医の不安も強く、国や県は、『公表に伴う発熱患者の受診集中やその他の患者の受診抑制』、『誹謗中傷や風評被害』など不安要素への対策を行うべきである」とした。
新型コロナ診療・検査体制に関するアンケート
7割の医療機関が感染者発生時の補償求める
アンケートの「(医療機関での)対応が難しいもの」についての質問では、「受ける方向で検討中」と回答した医療機関でも42%が「感染防護具確保と空気清浄機や換気設備などの環境整備」と回答しており、政府や県による感染防護具の安定的供給等が必要とされていることが分かった。
主な不安要素を指定に対する意向別に聞いたところ、「受けない方向で検討中」と回答した医療機関では「検体採取等による感染リスク」が最も高く、「従業員の同意や勤務体制」「公表に伴う発熱患者の受診集中やその他の患者の受診抑制」と続いた(図1)。こうした回答から、より多くの医療機関を「診療・検査医療機関(仮称)」として指定するには、唾液を検体として新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの感染の有無を検査できるキットの早期開発と普及や、指定医療機関の公表方法の検討等が必要である。
また、「受ける方向で検討中」と回答した医療機関では「公表に伴う発熱患者の受診集中やその他の患者の受診抑制」、「誹謗中傷や風評被害」と続いた。ここからは、指定医療機関の公表方法の検討や風評被害対策等を確実に行わなければ、指定に前向きの医療機関の協力も得られなくなる可能性もあることが読み取れる。
「行政に希望すること」については、回答医療機関のうち69%が「感染者発生の際の休業等に対する補償」を、68%が「感染者の後方連携体制の整備」を挙げている(図2)。政府や県はこれらの要望を受け止めた対策を行うべきである。
また、自由記入欄には「動線分離を行っているが一人の診察に30分以上要します」「後方連携体制が非常に不明瞭」「一般医療機関に丸投げの政治に対して不信感を持つ」などの声が寄せられた。
図1 主な不安要素【複数回答可】
図2 行政に希望すること【複数回答可】