兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年1月05日(1962号) ピックアップニュース

燭心

 謹賀新年。初詣、もうお済ませになられたでしょうか。普段神仏にかかわりのない暮らしをしていても、やはり新年、にわか信心でお参りするのも悪いものではない。心あらたに一年の抱負を刻みたいものである▼枕草子の一節に「正月に寺に籠りたるは、いみじう寒く...」と、初参りの様子が書かれてある。旧暦の正月は、今で言うと1月末、一番寒い時である。雪がちらつくのは風情があるが、雨がうち降るのは、「いとわろし(ありがたくない)」と感想が述べられている。かの才女も寒がりだったのだろうか? 宮中あげての行事も、氷雨の中ではたいそう苦労だったようで、同情する▼この章、いきいきした描写がなかなか面白い。安産を祈ったり、除目(任官の儀式)が近いので、昇進祈願の人が押し寄せたりしている様子や、若い男性らがご本尊のお参りもそこそこに、女官の宿坊のあたりをうろつく様子など、するどい観察眼に敬服する。千年の昔も、初詣客というのはあまり変わってはいないところが何とも興味深い▼さて、清少納言たちがこの時訪れた清水寺で、昨年暮れ「今年の漢字」に選ばれたのは〝密〟。〝3密〟が一躍流行語になったが、仏法で〝密〟とは、深遠の意味。世界のとらえ方を変えるのが密教で言う悟りだとか。なるほどコロナ後の世界観が問われている現在に、なかなか深遠な一語である。平和、人権、環境、社会保障、持続可能な社会、千年の後の人々に思いをはせながら、屠蘇に酔うのも悪くない(星)

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