2021年1月25日(1963号) ピックアップニュース
阪神・淡路大震災26年
談話 コロナ禍の今こそ震災を思い起こそう
理事長 西山 裕康
阪神・淡路大震災から1月17日で、26年を迎えた。17日にはメモリアル集会が神戸市内で開かれ、参加者は犠牲者を追悼するとともに、被災者一人ひとりに寄り添って生活と生業の復興を実現しようと確認した。理事長談話を掲載する。
阪神・淡路大震災から26年が経過しました。震災により6434人の方が亡くなり、3人の方が行方不明となっています。亡くなられた方は、年齢別では9歳以下が252人、10~19歳317人、20~29歳が472人と、20代を中心に多くの若い方が命を落とされました。もちろん命の尊さに年齢差はありませんが、その方々がその後歩んだであろう26年間に思いを馳せ、残された方々の胸中を察すると心が痛みます。謹んで哀悼の意を表します。
家族や大事な人を突然失った悲しみは、年月を経れば癒されるのでしょうか。特に子どもを失った親、親を失った子どもの心の空白は、私たちの想像をはるかに超え、あの日以前に戻りたいと思う方がほとんどでしょう。被災者の心情を本当に理解することは叶わないかもしれませんが、想像し、寄り添い、そしてその希望を実現する努力は今も可能です。
震災後に、心身や生活の回復のための環境は整えられてきたのでしょうか。震災発生以来、私たちは「人間の尊厳ある暮らしの再建」を実現すべく、絶えず国・県に対して被災者支援の拡充を主張し、活動してきました。被害が特に大きかった長田区では、町並みは瀟洒になりましたが、人々の生活、賑わい、コミュニティーは復興しないままです。新長田駅南地区の再開発事業や、借り上げ復興住宅の退去問題は「復興災害」とも言われています。
また、将来起こるとされている南海トラフ地震も含め、地震は、人間や社会の都合に合わせてくれません。「自己責任論」が堂々とまかり通る今、新型コロナ禍と自然災害が重なれば、極めて悲惨な状況になりかねません。
毎年1月17日には、災害への準備を怠らない気持ちを新たにし、震災の教訓を生かした備えを万全とするとともに、「大型、ハコモノ、上から目線」の「創造的復興」を許さないという認識を共有する機会にしなければなりません。
今年はコロナ禍のため追悼の催し物は縮小されましたが、亡くなった方々やその家族を思いやり、記憶を風化させないことは可能であり、被害の少なかった人々の役割と言えます。今はネットでの動画もあり情報を入手することも容易です。
26年目の1月17日を迎えた今こそ、もう一度震災を思い起こし、教訓を新たにして、ご自身のできることを考えるきっかけといたしましょう。
阪神・淡路大震災26年メモリアル集会
1月17日、「阪神・淡路大震災26年メモリアル集会」(主催:阪神・淡路大震災 救援・復興兵庫県民会議)が「コロナ禍での自然災害にどう立ち向かうか」をテーマに神戸市内で開催され、会場に41人、オンラインで76人が参加した。協会からは、武村義人・加藤擁一両副理事長が参加した。
復興県民会議から代表委員の畦布和隆氏が、1998年の被災者生活再建支援法成立など、26年間のたたかいの成果を報告。昨年は新型コロナ禍でも、「借り上げ住宅追い出し問題」の解決をめざし裁判に取り組んだことや、被災者生活支援法の支援対象の拡大などの成果があったと強調した。
東北からは、ふくしま復興共同センター代表委員の斎藤富春*よしはる*氏が、「東日本大震災10年 今、福島でおこっていること」として、福島原発のトリチウム汚染水の海洋放出や、汚染土壌の再利用計画、震災に便乗して大企業を呼び込む「イノベーション・コースト(国際研究産業都市)構想」などの問題点について解説した。また、東日本大震災後の運動の成果として、野党4党が「原発ゼロ基本法案」を国会に提出し、市民と野党の共通政策に「原発ゼロ実現」が盛り込まれるなど、共闘の広がりを挙げた。
ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会運営委員の段野太一氏は、10年間にわたる「借り上げ住宅問題」のたたかいについて報告した。裁判では敗訴が続いたものの、兵庫県では話し合いにより希望者ほぼ全員の継続入居が実現、神戸市でも団地ごとに継続入居を実現させ、知人同士で同じ団地への転居が可能となるなどの成果があったと報告した。大阪高裁で裁判が続いていた西宮市でも、7世帯中4世帯5人で和解が成立するなど、和解による解決が進められてきたと成果を強調した。
記念講演
集会の最後に参加者は、憲法25条の精神に基づき、人々の絆を最優先にし、オリンピック予算や軍事費を、暮らしと生業の再建による復興予算に回すことなどを求めるアピールを採択した。
阪神・淡路大震災から26年が経過しました。震災により6434人の方が亡くなり、3人の方が行方不明となっています。亡くなられた方は、年齢別では9歳以下が252人、10~19歳317人、20~29歳が472人と、20代を中心に多くの若い方が命を落とされました。もちろん命の尊さに年齢差はありませんが、その方々がその後歩んだであろう26年間に思いを馳せ、残された方々の胸中を察すると心が痛みます。謹んで哀悼の意を表します。
家族や大事な人を突然失った悲しみは、年月を経れば癒されるのでしょうか。特に子どもを失った親、親を失った子どもの心の空白は、私たちの想像をはるかに超え、あの日以前に戻りたいと思う方がほとんどでしょう。被災者の心情を本当に理解することは叶わないかもしれませんが、想像し、寄り添い、そしてその希望を実現する努力は今も可能です。
震災後に、心身や生活の回復のための環境は整えられてきたのでしょうか。震災発生以来、私たちは「人間の尊厳ある暮らしの再建」を実現すべく、絶えず国・県に対して被災者支援の拡充を主張し、活動してきました。被害が特に大きかった長田区では、町並みは瀟洒になりましたが、人々の生活、賑わい、コミュニティーは復興しないままです。新長田駅南地区の再開発事業や、借り上げ復興住宅の退去問題は「復興災害」とも言われています。
また、将来起こるとされている南海トラフ地震も含め、地震は、人間や社会の都合に合わせてくれません。「自己責任論」が堂々とまかり通る今、新型コロナ禍と自然災害が重なれば、極めて悲惨な状況になりかねません。
毎年1月17日には、災害への準備を怠らない気持ちを新たにし、震災の教訓を生かした備えを万全とするとともに、「大型、ハコモノ、上から目線」の「創造的復興」を許さないという認識を共有する機会にしなければなりません。
今年はコロナ禍のため追悼の催し物は縮小されましたが、亡くなった方々やその家族を思いやり、記憶を風化させないことは可能であり、被害の少なかった人々の役割と言えます。今はネットでの動画もあり情報を入手することも容易です。
26年目の1月17日を迎えた今こそ、もう一度震災を思い起こし、教訓を新たにして、ご自身のできることを考えるきっかけといたしましょう。
阪神・淡路大震災26年メモリアル集会
コロナ禍でもオンラインで
災害復興求める取り組み前進を確認し合う
1月17日、「阪神・淡路大震災26年メモリアル集会」(主催:阪神・淡路大震災 救援・復興兵庫県民会議)が「コロナ禍での自然災害にどう立ち向かうか」をテーマに神戸市内で開催され、会場に41人、オンラインで76人が参加した。協会からは、武村義人・加藤擁一両副理事長が参加した。復興県民会議から代表委員の畦布和隆氏が、1998年の被災者生活再建支援法成立など、26年間のたたかいの成果を報告。昨年は新型コロナ禍でも、「借り上げ住宅追い出し問題」の解決をめざし裁判に取り組んだことや、被災者生活支援法の支援対象の拡大などの成果があったと強調した。
東北からは、ふくしま復興共同センター代表委員の斎藤富春*よしはる*氏が、「東日本大震災10年 今、福島でおこっていること」として、福島原発のトリチウム汚染水の海洋放出や、汚染土壌の再利用計画、震災に便乗して大企業を呼び込む「イノベーション・コースト(国際研究産業都市)構想」などの問題点について解説した。また、東日本大震災後の運動の成果として、野党4党が「原発ゼロ基本法案」を国会に提出し、市民と野党の共通政策に「原発ゼロ実現」が盛り込まれるなど、共闘の広がりを挙げた。
ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会運営委員の段野太一氏は、10年間にわたる「借り上げ住宅問題」のたたかいについて報告した。裁判では敗訴が続いたものの、兵庫県では話し合いにより希望者ほぼ全員の継続入居が実現、神戸市でも団地ごとに継続入居を実現させ、知人同士で同じ団地への転居が可能となるなどの成果があったと報告した。大阪高裁で裁判が続いていた西宮市でも、7世帯中4世帯5人で和解が成立するなど、和解による解決が進められてきたと成果を強調した。
記念講演
コロナ禍は災害である
津久井進弁護士は、「コロナ禍における災害と人権」と題して記念講演。まず、「感染症流行」は、地震や洪水などと同じく災害の一つと定義されていることを紹介。これまでの阪神・淡路大震災からの教訓をもとに、災害法制を適用するなど災害時と同様の対応を日本全体で行う必要があると強調した。感染者やその家族への差別問題については、災害発生時の恐怖や不安、公的情報への不信などから風評被害や差別が創出されると解説。憲法13条・14条に定められた基本的人権の一つである平等権を尊重するとともに、一人ひとりが良識を持った行動をとることで解決へ導かなければならないと訴えた。集会の最後に参加者は、憲法25条の精神に基づき、人々の絆を最優先にし、オリンピック予算や軍事費を、暮らしと生業の再建による復興予算に回すことなどを求めるアピールを採択した。