兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年2月05日(1964号) ピックアップニュース

第38回在宅医療研究会に150人が参加
「看取られる側」から伝えたい緩和ケア

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がんと診断された緩和ケア医・関本剛先生(上)が、自らの体験をもとに患者との接し方を解説した

 医療者に求められる緩和ケアとは--。協会地域医療部は1月14日、がん患者への在宅緩和ケアに取り組む灘区・関本クリニックの関本剛先生を講師に、第38回在宅医療研究会「地域での緩和ケア~緩和ケア医の終活とアドバンスケアプランニング」を開催。これまでの在宅ホスピスの経験とともに、余命2年の肺がんと診断された自身が「看取られる側」になった体験を語った。来場とオンライン視聴をあわせ、医師・看護師・薬剤師・ケアマネージャーなど150人が参加した。

 関本先生は、2019年10月にStageⅣの肺がんと診断され、「余命2年」との宣告を受けた以降も、抗がん治療を受けながら「地域緩和ケア医」としての業務を継続。訪問診療や拠点病院での回診業務に従事し、地域での病診連携・診診連携の円滑化にも取り組んでいる。これまでの緩和ケア医としての「看取る側」の経験と、「看取られる側」となって初めて感じた体験の両方を還元したいとの思いから、単著『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』(2020年8月宝島社)を出版。メディアにもたびたび登場している。
 関本先生は、余命宣告されて以降の自分や家族の苦悩と葛藤も紹介しながら、人生会議(ACP:アドバンス ケア プランニング)の意義を説明。「進行がん患者は死亡前1カ月にADLが急低下することが多いが、そこから話し合いを始めてもできることは限られる。医療者は患者の体調が比較的良好な時期から話し合いをしておく方が良い」と強調した。
 また、自らがん患者となって以降、「残りの時間で遂行しておきたいこと」として書き出した『棺桶リスト』のエピソードを披露して、「自分自身の『いざというとき』に備えて、大切な人と、できれば医療者も交えて、それぞれの人生を振り返りながら『して欲しいこと』『して欲しくないこと』『なぜそう思うのか』などを話し合う機会をつくりましょう」と呼びかけた。
 参加者からは、「限りある命をとても冷静に受け止め、周りの方や社会のために生きざまを伝えて最期まで人生を全うされようとしておられることに感銘を受けた」「今まで忙しさにかまけて自分の人生を真剣に考えてこなかったが、残りの人生どう過ごして行くか、自分の課題として考えたい」などの感想が寄せられた。
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