2021年2月25日(1966号) ピックアップニュース
燭心
年に2回、米と麦を植えるのを二毛作と言うように、地表から1本、水辺で直線的に生えるイネ科の単子葉植物は、あたかも動物の皮膚表面から生える毛のように見える。生えるは、映える、栄える、晴れるに通じる。逆に毛枯(けが)れは、汚れ、穢れにつながっている▼河川の周辺の陸地、洲に生えた植物は古来、洲毛と呼ばれていた。[suke]が[suge]を経て[suga]に訛っていった。菅原、菅生、菅沼なる人名が多くあるのは、日本のような温帯多雨気候によるところだろう。200種以上の雑草が日本の河川や湖沼に繁茂し、日本人は菅笠をはじめ、蓑、縄、草履、筵など日用品を作っていた。菅の断面が三角形で、表面を平坦にできたためである▼さて、もうすぐ雛祭り。小学生の頃の思い出だが、2人の妹のため、母の実家から7段の雛人形が送られてきた。最上段から男女の内裏雛、三人官女、五人囃子、随身、衛士と並んでいた。万年筆や置時計、真空管ラジオを分解したがる好奇心旺盛な少年だった筆者は、雛壇の下へ行くほどカースト制のごとく、身分により服装が貧相になっているのを見て、弟と一緒に面白半分で、御内裏様の人形の首と随身の首を入れ替えて遊んでいた。後に母親にこっぴどく叱られたが、父は笑いながら、これぞまさしく下克上だと言っていたことを思い出す▼それから60年が経った。そろそろ日本のトップに立つ菅首相の首も早くスゲ替えなければ、コロナ禍での日本人はますます不幸になる。(鼻)