兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2021年3月15日(1968号) ピックアップニュース

談話 東日本大震災・福島第一原発事故10年
生活再建への取り組みを継続します 理事長 西山 裕康

1968_04.jpg 巨大な地震と津波により、約1万6000人が命を落とし、今も2529人が行方不明のままの東日本大震災・福島第一原発事故から10年が経過しました。あらためて、震災で亡くなられた方々とそのご遺族に対し深く哀悼の意を表します。
 今なお4万2千人近くの避難者が、災害公営住宅や仮設住宅、全国の親戚・知人宅等で不自由な暮らしを続け、近畿地方にも2100人が暮らしておられます。避難者の高齢化と避難生活の長期化は、努力して新しい生活に溶け込むほど、故郷へ帰ってかつてのコミュニティを取り戻す選択を難しくしています。避難後10年の歳を重ねた高齢者に、自宅を再建し転居する力は残されているのでしょうか。避難後に生まれ10歳になった子どもたちの故郷はどこなのでしょうか。全国の避難者が、どの場所で生活されようとも、少しでも心身の安らぐ日々を過ごされるように願っています。
 今年2月13日の大規模余震や、毎年のように起きる風水害が示すように、「災害列島」日本では誰もが、いつ自然災害の被災者になるともしれません。国際基準から程遠い劣悪な避難所環境は、衛生面やプライバシー面から心身の回復を妨げるだけでなく、新型コロナはもちろん各種感染症蔓延の場ともなりえます。とりわけ震災関連死の大きな要因とされる避難所のTKB(トイレ、食事、ベッド)の抜本的改善は急務です。
 残念ながら「10年」という区切りの年にもかかわらず、新型コロナ禍で、災害を風化させないためのメモリアル行事は制限されざるを得ません。万全の感染対策の下、大災害が忘れ去られないよう学習し生活要求をまとめる行事の開催継続と、共同の取り組みが必要です。協会は震災後に被災地への訪問活動を続けて参りました。10年を経た今、被災者本位での法整備、被災した地域や人々の実情に即した、地道な交流、取り組みの継続がいっそう重要となっています。
 協会は今年も1月17日、阪神・淡路大震災救援・復興県民会議主催「大震災26年メモリアル集会」の開催に協力し、東日本大震災被災地ともつながり、昨年末に「被災者生活再建支援法」の改正をかちとった成果を確認しました。被災者にとって大切なのは、「創造的復興」の美名を借りた大型公共事業や再開発ではなく、住民本位の生活再建を実現させる制度の拡充です。兵庫県内の「借り上げ公営住宅入居者追い出し裁判」でも、希望者全員が継続入居できるよう、引き続き取り組む方針です。
 人々の命や暮らしを奪った震災・津波・核汚染を風化させず、継続して粘り強く運動することが、亡くなられた方へのせめてもの供養であり、被災者への理解と共感、励ましとなると考えます。これからも協会の活動への会員皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方