2021年4月15日(1971号) ピックアップニュース
環境・公害対策部
石炭火発増設・原発稼働差し止め判決に声明
環境・公害対策部は3月27日の第1130回理事会で、神鋼が神戸市灘区で進めている火発の増設を認める大阪地裁判決および広島高裁の愛媛県の伊方原発運転差し止め仮処分取り消しに抗議し、水戸地裁の東海第二原発差し止め判決を支持する声明を発表した。以下に要旨を掲載する。
[抗議声明]
神戸製鋼所が神戸市灘区で建設を進める石炭火力発電所を巡り、周辺住民らが、同建設を認めた国の環境影響評価はCO2の排出やPM2.5の考慮が不十分で無効として取り消しを求めた行政訴訟の判決が3月15日に出され、大阪地裁は市民の訴えを退けた。
判決は発電所の稼働により相当量のPM2.5が生成されることが見込まれることは認めたものの、評価方法は確立しておらず、今回の環境影響評価にPM2.5の評価を盛り込まなかったことは違法とはいえないと判断した。
しかし、PM2.5は健康への影響が明らかで、英米ではすでに環境影響評価の対象とされている。また環境影響評価にあたり、環境省が経産省の意見を聞いた結果、環境保全の観点から重要な記述が削除されたことは、環境影響評価制度の根幹を大きく歪めるものであるにもかかわらず、趣旨に反するとはいえないとしたことは許しがたい。
さらに、判決は住民側にCO2排出による被害について「個人的利益として自己の判断のみで追及すべき性質のものではない」と争う原告適格を認めなかった。地球温暖化による気候変動の影響が世界規模で起こり、菅首相が排出実質ゼロを宣言するなど、温暖化の影響とその対策の重要性が明らかになっている中、現行法の限界を指摘するにとどまり、住民の訴えの権利すら認めなかったことは非常に残念である。
私たちは医師・歯科医師の団体として、健康被害や地球温暖化防止の観点から同訴訟を支援してきた。大気汚染による住民被害発生を放置し、地球温暖化対策に逆行する本判決に強く抗議する。
[声明]
広島高裁は3月18日、愛媛県の四国電力伊方原発4号機について運転差し止めを命じた仮処分決定を取り消した。同日、水戸地裁は、日本原子力発電・東海第二原発について、周辺自治体の避難計画が不十分とし、運転差し止めを命じる判決を言い渡した。
広島高裁は昨年1月に同高裁が差し止めを決定する理由とした火山・地震リスクと規制基準の問題点について、原発の安全性を揺るがす災害等の可能性を認めながら、その時期や規模は具体的に予測できず、住民らの生命、身体や健康が侵害される具体的危険があると認められなければ運転差し止めを命じる法的判断はできないとして、四電の安全対策に問題はないとした。
さらにはこれらのリスクの立証責任を住民に求めた。これは92年の伊方原発訴訟の最高裁判決をはじめ、国や電力会社に立証責任を求めるという原発訴訟が積み上げてきた到達すら無視する判断である。住民の立場に立たない不当な本決定に強く抗議するとともに、今後、本審において、住民の人格権を守る判決が出されるよう求める。
一方、水戸地裁は住民の避難計画の不十分さを指摘し、住民の生命や身体に深刻な被害を与えることになりかねないと人格権侵害の危険性を認めて、運転差し止めを命じた。地震や津波の想定、耐震性については問題を認めなかったという点で不十分であるものの、避難計画の問題点を認定したという点で画期的であり、評価したい。
司法には住民の命を守る判断を求めるとともに、国には原発の新増設の放棄、現存原発すべての廃炉と再生可能エネルギーへの転換を強く求めるものである。
[抗議声明]
神戸製鋼石炭火発増設行政訴訟・大阪地裁判決に抗議する
神戸製鋼所が神戸市灘区で建設を進める石炭火力発電所を巡り、周辺住民らが、同建設を認めた国の環境影響評価はCO2の排出やPM2.5の考慮が不十分で無効として取り消しを求めた行政訴訟の判決が3月15日に出され、大阪地裁は市民の訴えを退けた。判決は発電所の稼働により相当量のPM2.5が生成されることが見込まれることは認めたものの、評価方法は確立しておらず、今回の環境影響評価にPM2.5の評価を盛り込まなかったことは違法とはいえないと判断した。
しかし、PM2.5は健康への影響が明らかで、英米ではすでに環境影響評価の対象とされている。また環境影響評価にあたり、環境省が経産省の意見を聞いた結果、環境保全の観点から重要な記述が削除されたことは、環境影響評価制度の根幹を大きく歪めるものであるにもかかわらず、趣旨に反するとはいえないとしたことは許しがたい。
さらに、判決は住民側にCO2排出による被害について「個人的利益として自己の判断のみで追及すべき性質のものではない」と争う原告適格を認めなかった。地球温暖化による気候変動の影響が世界規模で起こり、菅首相が排出実質ゼロを宣言するなど、温暖化の影響とその対策の重要性が明らかになっている中、現行法の限界を指摘するにとどまり、住民の訴えの権利すら認めなかったことは非常に残念である。
私たちは医師・歯科医師の団体として、健康被害や地球温暖化防止の観点から同訴訟を支援してきた。大気汚染による住民被害発生を放置し、地球温暖化対策に逆行する本判決に強く抗議する。
[声明]
伊方原発差し止め取り消し決定に抗議するとともに東海第二原発差し止め判決を支持する
広島高裁は3月18日、愛媛県の四国電力伊方原発4号機について運転差し止めを命じた仮処分決定を取り消した。同日、水戸地裁は、日本原子力発電・東海第二原発について、周辺自治体の避難計画が不十分とし、運転差し止めを命じる判決を言い渡した。広島高裁は昨年1月に同高裁が差し止めを決定する理由とした火山・地震リスクと規制基準の問題点について、原発の安全性を揺るがす災害等の可能性を認めながら、その時期や規模は具体的に予測できず、住民らの生命、身体や健康が侵害される具体的危険があると認められなければ運転差し止めを命じる法的判断はできないとして、四電の安全対策に問題はないとした。
さらにはこれらのリスクの立証責任を住民に求めた。これは92年の伊方原発訴訟の最高裁判決をはじめ、国や電力会社に立証責任を求めるという原発訴訟が積み上げてきた到達すら無視する判断である。住民の立場に立たない不当な本決定に強く抗議するとともに、今後、本審において、住民の人格権を守る判決が出されるよう求める。
一方、水戸地裁は住民の避難計画の不十分さを指摘し、住民の生命や身体に深刻な被害を与えることになりかねないと人格権侵害の危険性を認めて、運転差し止めを命じた。地震や津波の想定、耐震性については問題を認めなかったという点で不十分であるものの、避難計画の問題点を認定したという点で画期的であり、評価したい。
司法には住民の命を守る判断を求めるとともに、国には原発の新増設の放棄、現存原発すべての廃炉と再生可能エネルギーへの転換を強く求めるものである。