2021年7月05日(1978号) ピックアップニュース
第53回総会 コロナ禍に見合う医療提供体制を
山本太郎長崎大学教授が記念講演
西山裕康理事長はあいさつで、この1年間の新型コロナウイルス感染症感染拡大により、受診抑制が一気に進み、医療機関の経営は存続の危機に陥ったとした。そして、第4波は収まりつつあるとしつつ、発熱患者さんの動線分離、感染対策に加え、煩雑なワクチン接種関連業務が重なり、医療従事者の負担は少なくないと訴えた。
そして政府は、緊急事態宣言下においても、「すべての医療関係者に事業継続を要請」したが、医療機関の経営悪化について、減収補填を行っていないと指摘。コロナ感染症拡大による経営悪化の責任を医療機関に押し付け、国民皆保険制度における国の責任を放棄するものだと批判し、高い公共性と非営利性を有する医療において、事業継続の要請と減収補填はセットでなされるべきだと強調した。
続いて、これらの問題の背景には、政府の新自由主義政策があるとし、自己責任を基本に小さな政府を推進する新自由主義は、格差と貧困を拡大させるもので、社会保障を掌る医療機関の責務と共存できないと訴えた。
武村義人副理事長が会務報告と新年度方針案を提案。方針案では、政府の医療・社会保障削減と患者負担増政策や、改憲の動きに対峙すると強調し、社会保障拡充へ、さらなる患者負担増計画に反対し、医療費の総枠拡大、憲法・平和・民主主義を守る政治への転換に力を尽くすとし、引き続き「頼りになり、役立つ協会」となるよう全力を尽くすと提案した。また、吉岡巌副理事長が、2021年度予算案を提案した。
討論では、県知事選挙への取り組み、保険でより良い歯科医療を求める運動、アスベスト問題、組織拡大などについて、6人が発言した。
最後に新型コロナウイルス感染症の今後の拡大に備え医科・歯科医療機関経営を保障すること、未知の新型感染症に備えるためにも医療費抑制政策を転換し、公衆衛生体制や医療提供体制を抜本的に強化すること、患者・介護利用者負担増計画をやめ、税・保険料の応能負担を強化し、医療・社会保障を拡充すること、保険でより良い歯科医療の実現へ歯科保険適用範囲を拡大すること、災害被災者に対して公的補償を抜本的に強めることなどを求める決議を採択。2020年度会務報告と新年度方針案、予算案、協会新役員も併せて承認した。
記念講演では、長崎大学熱帯医学研究所環境医学部門国際保健学分野教授の山本太郎先生が、「感染症と文明~コロナ禍で問われる医療と社会」と題して講演。農耕などの文明の拡大とともに感染症の広がりが起こったことやウイルスの変異などを解説した。