兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年8月25日(1982号) ピックアップニュース

燭心

 コロナ感染症が猛威を振るう東京でオリンピックが強行された。オリンピックでさえ許されるのだからと、7月の連休中には居住圏を越えた移動が少なからずみられ、さらなる感染拡大を招いた。私が最も恐れたのは、大会期間中、感染症対策の隙をついてテロが発生することであった。幸いにもテロは起こらず、また大会期間中に選手がコロナで命を落とすこともなかったことに心より安堵した▼大会期間中も、オリンピック中止を求める抗議は粛々とおこなわれていたが、その姿は報道されなかった。サイレントスタンディングでは大会自体をその場で中止させることはできなかった▼閉会式の頃より首都圏を中心に感染爆発が生じ、医療現場は今まさにひっ迫し、救える命も救えない凄惨な状態に陥っている。オリンピックはやはり中止すべきだったと、今でも考えている▼一方、選手には敬意を払いたい。今回の大会では、民族差別や暴力、性差別への抗議が、競技のパフォーマンスとして随所で行われたことに気が付いたであろうか。オリンピックは露骨な国威発揚の場として、また現在は新保守主義における経済勝者の利益を目的として、利用されてきた歴史がある。今回の大会では、選手自身が、これまで封印されてきた表現について、自らの競技を通じて、メッセージとして発信することができた。私たちは選手たちが競技の中で残した無言の抵抗のメッセージを見逃さず、今後の大会の在り方について、真摯に考えねばならない(眞)
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