2021年9月15日(1984号) ピックアップニュース
新型コロナウイルス感染症関連第6回アンケート詳報
後方病院確保へ医療体制拡充を
新型コロナウイルス感染症関連第6回アンケート結果の詳報を掲載する。
対 象:協会開業医科会員 3,161件
有効回答:484件(回答率15.3%)
また、個別接種の実施時間帯について見ると、「診療時間外」と「診療時間中・外どちらも」あわせて49.4%の医療機関で時間外接種が行われている(図3)。背景には、診療時間内だけでは対応できないことと、ワクチン接種に積極的な医療機関の姿勢があると思われる。
1週間の接種回数については、1〜49回が最も多く49.4%だった(図4)。通常の報酬に加え支援金が給付される政府の「個別接種促進支援事業」の対象となる100〜149回は12.3%、150〜199回は6.2%だった。
また、ワクチン接種での問題点や不安な点についての質問では、「6の倍数の予約者確保」が60.6%と最も多く、「ワクチンの取扱いや保管」「スペースや人員の確保」「副反応への対応」「かかりつけでない患者への説明と同意」と続いた(図5)。自由記述でより具体的にワクチン接種上の課題を聞いたところ「希望者が少なく6人に達しない。予約キャンセル変更などの対応が大変」「接種後の待機場所の確保。休日の人員確保が困難」「インフルエンザと違って注射後15分の待機場所の確保、事務や看護師を長時間にわたって拘束することになり経費がかかる」「ワクチンの安定した供給がなく、常に不安定」「かかりつけ患者以外には、病歴聴取、状態把握、副反応の危険性等に気を使う」などの声が寄せられた。
入院していない新型コロナウイルス感染症患者への対応について「実施・実施予定のもの」を聞いたところ、「自宅療養あるいは入院等調整中の患者への往診・訪問診療」が37.9%、「宿泊療養施設への出務やオンコールへの協力」が23.9%、「介護施設での検査・診療」が17.9%、「退院後患者の診療」が13.4%となった(図7)。普段から訪問診療を行っている診療所の割合は22%程度で、それを大きく上回る医療機関が新型コロナウイルス感染症患者への往診や訪問診療を行うと回答している。また、それぞれの項目で前回調査より実施するとした医療機関が増えており、これらの背景には、この間の感染者や自宅療養者の増加を受けた医師の前向きな意識の変化があると思われる。
また、それぞれの項目を標榜科ごとに見ると、「自宅療養あるいは入院等調整中の患者への往診・訪問診療」は、内科、小児科、外科、耳鼻咽喉科で40%以上の医療機関が実施すると回答している(図8)。
「介護施設での検査・診療」については、「外科」「内科」「小児科」に加え、「泌尿器科」や「整形外科」で実施する医療機関の割合が高くなっているが、これはこれらの標榜科で介護施設への訪問診療等が日常的に行われているためであると思われる(図9)。
「退院後患者の診療」については、いまだ十分に病態が解明されておらず、患者数も多くないため、実施している医療機関はそれほど多くない。特徴的なのは、後遺症としての味覚・嗅覚障害に対応する耳鼻科と同様に不安や抑うつ、睡眠障害の診療を行う精神科で実施するとの回答が比較的高くなっていることである。また、実際に行った診療等について自由記述で聞いたところ、「本日も在宅酸素療法を導入、ステロイド投与を行っている患者さんを入院させるのに苦労したところです」、「SpO2が低下し、入院が必要なのにすぐに対応できないことがあった」、「新型コロナ回復後も脱毛や意欲低下、味覚や嗅覚の低下が続く患者をフォロー中」「毎日電話で様子を聞くことにより、自宅療養患者に『医師とつながっていると思うだけで安心感が全然違う』と言われた」などの具体的な事例が寄せられた。
入院していない新型コロナウイルス感染症患者への対応で感じる「不安や問題点」については、「悪化・急変時の連絡、入院・入所の調整方法や受け入れ体制」が59.6%で最も多く、「日常診療との両立が困難」、「自身や看護師等の感染」、「治療方針や転送基準などの指針が不明瞭」と続いた(図10)。
協会は、引き続き新型コロナ拡大に伴う診療所・クリニックの関与や協力体制をさらに充実させるため、今回のアンケートに基づいて、政府や行政への働きかけを行っていく。
アンケート概要
実施期間:2021年8月23日〜9月1日対 象:協会開業医科会員 3,161件
有効回答:484件(回答率15.3%)
7割弱の診療所でワクチン接種実施
ワクチン接種への対応については、「実施している(する予定)」との回答が66.8%に上り、「実施していない(しない予定)」は29.7%に留まった。通常のインフルエンザのワクチン接種実施医療機関の割合が、兵庫県内で59.3%であることと比べて、より多くの医療機関が新型コロナウイルスワクチン接種に協力していることが明らかになった(図1)。ワクチン接種の実施状況について標榜科別に見ると、外科の実施率が最も高く、83.9%に上った。以下、内科81.8%、小児科75.0%と続いた(図2)。さらに、耳鼻咽喉科、産婦人科、泌尿器科、整形外科などの科でも半数程度が個別接種を実施しており、診療科に関わらず、ワクチン接種に積極的な医療機関が多いことが分かった。また、個別接種の実施時間帯について見ると、「診療時間外」と「診療時間中・外どちらも」あわせて49.4%の医療機関で時間外接種が行われている(図3)。背景には、診療時間内だけでは対応できないことと、ワクチン接種に積極的な医療機関の姿勢があると思われる。
1週間の接種回数については、1〜49回が最も多く49.4%だった(図4)。通常の報酬に加え支援金が給付される政府の「個別接種促進支援事業」の対象となる100〜149回は12.3%、150〜199回は6.2%だった。
また、ワクチン接種での問題点や不安な点についての質問では、「6の倍数の予約者確保」が60.6%と最も多く、「ワクチンの取扱いや保管」「スペースや人員の確保」「副反応への対応」「かかりつけでない患者への説明と同意」と続いた(図5)。自由記述でより具体的にワクチン接種上の課題を聞いたところ「希望者が少なく6人に達しない。予約キャンセル変更などの対応が大変」「接種後の待機場所の確保。休日の人員確保が困難」「インフルエンザと違って注射後15分の待機場所の確保、事務や看護師を長時間にわたって拘束することになり経費がかかる」「ワクチンの安定した供給がなく、常に不安定」「かかりつけ患者以外には、病歴聴取、状態把握、副反応の危険性等に気を使う」などの声が寄せられた。
4割の医療機関が在宅の新型コロナ患者対応
政府は新型コロナウイルス感染症患者の療養について、これまでの「原則入院」という方針を転換し、「入院させる必要がある患者以外は、自宅療養を基本とし、家庭内感染の恐れや自宅療養ができない事情等がある場合に宿泊療養を活用する」との方針を示している。これに対し、賛否を問うたところ、「賛成」が45.6%で「反対」は33.2%、「その他」が18.6%だった(図6)。「賛成」が「反対」を上回ったものの、その理由を自由記入で聞いたところ、「賛成」とした回答者でも「軽症者まですべてを入院させる必要はないと思うが、十分な経過観察のできる体制と必要な時には入院できるようにする必要がある」、「医療機関が切迫しているので仕方がない。トリアージが大切だと思う」、「在宅療養で開業医が診るのであれば、やはり後方病院の確保をしてほしい」としており、医療逼迫の状況下では、「賛成」せざるを得ないとの判断が働いていると思われる。入院していない新型コロナウイルス感染症患者への対応について「実施・実施予定のもの」を聞いたところ、「自宅療養あるいは入院等調整中の患者への往診・訪問診療」が37.9%、「宿泊療養施設への出務やオンコールへの協力」が23.9%、「介護施設での検査・診療」が17.9%、「退院後患者の診療」が13.4%となった(図7)。普段から訪問診療を行っている診療所の割合は22%程度で、それを大きく上回る医療機関が新型コロナウイルス感染症患者への往診や訪問診療を行うと回答している。また、それぞれの項目で前回調査より実施するとした医療機関が増えており、これらの背景には、この間の感染者や自宅療養者の増加を受けた医師の前向きな意識の変化があると思われる。
また、それぞれの項目を標榜科ごとに見ると、「自宅療養あるいは入院等調整中の患者への往診・訪問診療」は、内科、小児科、外科、耳鼻咽喉科で40%以上の医療機関が実施すると回答している(図8)。
「介護施設での検査・診療」については、「外科」「内科」「小児科」に加え、「泌尿器科」や「整形外科」で実施する医療機関の割合が高くなっているが、これはこれらの標榜科で介護施設への訪問診療等が日常的に行われているためであると思われる(図9)。
「退院後患者の診療」については、いまだ十分に病態が解明されておらず、患者数も多くないため、実施している医療機関はそれほど多くない。特徴的なのは、後遺症としての味覚・嗅覚障害に対応する耳鼻科と同様に不安や抑うつ、睡眠障害の診療を行う精神科で実施するとの回答が比較的高くなっていることである。また、実際に行った診療等について自由記述で聞いたところ、「本日も在宅酸素療法を導入、ステロイド投与を行っている患者さんを入院させるのに苦労したところです」、「SpO2が低下し、入院が必要なのにすぐに対応できないことがあった」、「新型コロナ回復後も脱毛や意欲低下、味覚や嗅覚の低下が続く患者をフォロー中」「毎日電話で様子を聞くことにより、自宅療養患者に『医師とつながっていると思うだけで安心感が全然違う』と言われた」などの具体的な事例が寄せられた。
入院していない新型コロナウイルス感染症患者への対応で感じる「不安や問題点」については、「悪化・急変時の連絡、入院・入所の調整方法や受け入れ体制」が59.6%で最も多く、「日常診療との両立が困難」、「自身や看護師等の感染」、「治療方針や転送基準などの指針が不明瞭」と続いた(図10)。
政府は低医療費政策の転換を
最後に「一般の方や政府へのメッセージ」として、新型コロナウイルス感染症対策について自由記述で聞いたところ、「ベッド数削減方針を変更するべき」、「医療提供体制のパンクは『医療費抑制政策』で医療資源が十分確保できていていなかったため」、「緊急時にも対応できるような医療体制、ワクチン確保、基礎研究に十分な資金を普段から投入する必要があった」など、政府の医療費抑制政策に基づく病床削減方針に批判の声が上がったほか、「政府は何の対策も行っていない。専門家のアドバイスに耳を傾けるべき」「政治家はデータに基づく議論をしてください」など科学的知見を軽視する政府の姿勢への批判の声も多数みられた。また、「開業医でも、アビガン、イベルメクチン、抗体カクテル療法、オルベスコ、デキサメサゾン等を使えるようにしてほしい」「指定感染症(2類感染症相当)から5類感染症に変更した方が、早い段階で開業医が治療に当たれると思う」「短期間で良いので一度ロックダウン等による人流抑制を行わないと、さらに感染が拡大する」「ワクチンパスポートの活用を」など具体的な提案も多数寄せられた。協会は、引き続き新型コロナ拡大に伴う診療所・クリニックの関与や協力体制をさらに充実させるため、今回のアンケートに基づいて、政府や行政への働きかけを行っていく。