兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年9月25日(1985号) ピックアップニュース

主張 米軍アフガン撤退
日本政府は加害責任の自覚と猛省を

 8月31日をもってアフガニスタンから米軍が完全撤収し、米国最長の20年にも及んだアフガニスタン戦争が終結した。
 この「対テロ戦争」は、米同時多発テロに対する「報復」として始まった。開戦当時のブッシュ政権は、テロの温床である地域を「独裁国家」「破綻国家」「貧困国」とし、その政権を倒し民主国家をつくると宣言した。しかし混乱が深まり、収拾がつかないまま米軍が撤収したことによって、再びタリバンが実効支配する20年前に歴史の針を戻したことになる。
 他国の混乱情勢としてメディアは報道するが、日本が果たした負の役割は大きい。日米同盟の名の下で、自衛隊をインド洋に派遣して海外で軍事行動を行った戦争であることを忘れてはならない。
 後にイラク戦争が起こった時には、与党3党(自民・公明・保守新)によって、イラク戦争に対処する「イラク特措法」が、2003年7月26日に成立した。これはイラクに大量破壊兵器が存在するとし、掃討作戦に自衛隊も参加することを目的としたものである。戦闘継続中の米英軍のために武器・弾薬・燃料等を輸送することは、戦闘行為への協力そのものと言える。日弁連も「イラクにおける自衛隊の武力行使を容認するイラク特措法案は、憲法に違反するおそれが極めて大きい」として、イラク特措法への反対声明を発出している。
 この特措法は名の通り期限付きで、2009年に失効したが、この特措法を恒久法とする目的で成立したのが、集団的自衛権行使を可能にする、いわゆる安保関連法である。さまざまな反対運動が起こり、国会の参考人質疑でも、与党が推薦した憲法学者の長谷部恭男氏すら〝集団的自衛権が許されるというその点について、憲法違反であるというふうに考えている〟と述べている。
 過去の戦争を振り返る上で重要なことは、真実をしっかり見つめ、責任の所在を明確にし、その教訓を忘れず次世代につなげていくことである。京都精華大学の白井聡氏は著書『永続敗戦論』の中で、〝日本独特の天皇ファシズムと言われる戦前の社会形態を「無責任の体系」と名付けたが私たちが本当に反省後悔したならば、この体系が克服されていなければならない(丸山眞男)〟と引用し、福島原発事故はこの「無責任の体系」が日本社会に残り続けた表れであると指摘している。そして、日本ではあの戦争に本当に負けたと思っていないので反省も後悔も自己変革することもなく、旧来の体系が残り続けていると指摘している。
 米軍のアフガニスタン撤退により明らかとなったのは、戦争では国家間の憎悪と対立が深まるばかりで、問題は解決しないということである。平和憲法を掲げる日本としてすべきは、アフガニスタンで人道支援活動に取り組んだ中村哲医師のような国際貢献である。
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