兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年10月25日(1988号) ピックアップニュース

主張 2021年衆議院選挙にあたって
選挙で声を上げて政治を変えよう

 衆議院選挙の投票日が迫ってきた。岸田新首相が今後取り組むとしている公約への評価が問われる選挙である。
 岸田首相が、指名後間を置かずに国会を解散したため、コロナ対策、外交問題、憲法をめぐる動き、エネルギー問題、そして経済問題など、課題は山積である。
 われわれ医療従事者にとっての喫緊の課題はコロナ対策である。小泉構造改革以降、社会保障費は削られ続けてきた。このことが、コロナ感染拡大に際し、医療提供体制を貧弱なものにしたのであるが、菅前政権は、それら失敗の責任を開業医に押し付けた。感染拡大による医療崩壊は、開業医がコロナ治療に非協力的であったためとしたのである。しかし、医療崩壊の原因が、保健所を半減し、病床の余裕も削減し、医療現場に十分な予算を割かなかったことにあるのは明確である。
 経済分野において岸田首相は、〝新自由主義路線からの転換〟を挙げ、中間層への分配を強化させ、それによる内需を喚起し、GDPを増加させるとしている。しかし、「令和版所得倍増計画」にあたっての具体的な政策は示されていない。この30年間世界に類を見ない不景気の最中であり、これまでの政策を大幅に転換しない限り、所得倍増は実現しないだろう。そして所得倍増が実現しなければ、岸田首相が唱える内需の喚起やGDPの拡大も絵に描いた餅にしかならない。
 所得倍増計画では、「成長なくして分配なし」との考えの下、安倍元首相の"三本の矢〟を引き継ぐとしており、安倍・菅首相につづく、アベノミクスの三番煎じである。この10年を振り返ると、アベノミクスは確かに一部の富裕層の富を大きく増やしたが、一方で一般市民の平均給料はまったく増えることがなく、貧富の格差を拡大させた。経済政策においてこれまでの路線を引き継ぐならば、前述の所得倍増計画とは完全に矛盾する。本気で"新自由主義からの脱却〟を考えるならば、野党が提案している、年間所得1000万円以下の所得税非課税措置など、思い切った政策が必要であろう。
 社会保障制度やコロナ対策、政治・経済問題などで、困ったことやおかしなことがあれば、声を上げないと改善されない。黙っているということは、現状に納得していると解釈される。選挙、特に国政選挙は声を上げる一番大きな機会である。
 世界にはいまだに参政権を認められない国民が多く存在し、日本国内に生活基盤があっても地方参政権すらない市民も大勢暮らしている。そのような人々にとって、この投票率の低さはどのように映っているだろうか。選挙権がある人は、今一度、日本の体力が疲弊する前に投票で声を上げよう。
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