2021年11月05日(1989号) ピックアップニュース
燭心
地球上の生物が陸上に進出して5億4千万年、この間に5回の大量絶滅が発生した。そして今、6度目の大量絶滅が進行しているという。その規模は過去の5回よりも進行が速く、深刻さが指摘されている▼その原因が人間にあるのは明らかだ。メガファウナとは成長すると44㎏を超える大型獣のことだが、オーストラリアに人間が移住した4万年前に22種いたメガファウナは、現存する3種を残してすべて絶滅した▼歴史的に人間が到来するとその土地のメガファウナが急速に姿を消す。獣がいなくなると狩猟生活が行き詰まり、農耕に活路を見出すことになる。安定した食料の確保は人口を増加させ、さらに多くの食料を得るために農地の拡大を繰り返す。人間による他の生物の絶滅原因は、生存戦略によるものではなく、生息地の破壊と乱獲が主な原因とされる▼自然界においては、ライオンのような強者であっても捕食するシマウマの数が減れば自然に減少し、ライオンが減ることによってシマウマの個体数は増加に転じるという循環を繰り返している。また、ダーウィンが進化論で用いた生存競争も「同じ種の個体間における繁殖のための競争」であり、他の種を滅ぼすようなことはしない▼産業革命以後、生物絶滅の加速と同時に気候変動が発生している。人類が頂点にいる期間は長くないだろう。地球史の中で、人間は自らの手によって絶滅する初めての種になるかもしれない。眞鍋淑郎さんのノーベル賞受賞にそんな未来を想像する(九)