兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2021年11月25日(1991号) ピックアップニュース

談話 総選挙結果について
2021年11月13日 兵庫県保険医協会  第1142回理事会

 協会は、総選挙結果について11月13日の第1142回理事会で、下記の談話を承認した。

 兵庫県保険医協会は今回の総選挙にあたって、新型コロナウイルス感染症対策や社会保障制度の充実、平和憲法の堅持などを柱とする「開業保険医の要求案」を発表し、各政党・候補者と懇談を行ってきた。
 10月31日投開票の総選挙は、自民党が公示前議席から15議席を減らしたものの、連立を組む公明党が3議席増やし合計で293議席を獲得、与党で引き続き全ての衆院常任委員会で委員長ポストを独占し、全委員会で過半数の委員を与党が確保する絶対安定多数を確保した。
 一方の野党は、立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の4党が市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)と共通政策で合意し、217の選挙区で候補者を一本化。政権交代を訴えて選挙に臨んだが、れいわ新選組が3議席を新たに獲得したものの、社民は公示前の議席を維持、立憲民主党と共産党が議席を減らす結果となった。
 与野党ともに伸び悩んだ中、第3極である日本維新の会が公示前の11議席から41議席へと躍進した。日本維新の会は選挙後、来年の参院選とともに憲法改正の国民投票を実施すべきとしている。今回の選挙で与党とあわせ、改憲勢力が衆院で改憲の発議に必要な3分の2を優に超えることになり、改憲が現実味を持ちつつある。
 今回の選挙はコロナ禍で、9年にわたり安倍・菅自公政権が進めてきた、社会保障費を抑制し大企業・富裕層の利益の最大化を目指す政治の転換を求める世論が高まる中で行われた。自公政権が選挙の「顔」を、求心力を失った菅義偉前首相から、新たに「新自由主義からの転換」や「新しい資本主義」を掲げる岸田文雄首相にかけ替えて総選挙をたたかったのは、これまでの政権への批判をかわして、政権の延命を図る姑息な手法と言わざるを得ない。
 総選挙後、首相の肝いりで立ち上げられた「新しい資本主義実現会議」の緊急提言には、再分配の具体策は盛り込まれず、安倍・菅政権が掲げた政策が並べられた。医療・社会保障政策でも、岸田首相は、地域医療構想について病床削減を進める考えを明らかにし、財務省では、来年度診療報酬改定についてマイナス改定を求める議論が行われている。これでは、岸田首相の「新自由主義からの転換」は選挙目当てであったと言わざるを得ない。
 野党共闘は候補者を一本化した217の選挙区のうち、62議席を確保するにとどまったが、候補者を一本化しなかった72の小選挙区では、わずか6議席しか確保できておらず、共闘は一定の成果があったといえる。また、今回の野党共闘が共産党も含めて共通政策と政権の枠組みを明示したことは大変重要である。ただし、与党に競り負けた小選挙区では、立憲民主の支持母体である連合の意向等により従来から野党間の信頼関係が醸成されていなかったとの指摘もあり、野党各党には、今後、さらなる共闘関係充実の努力が求められる。
 今回の総選挙では、第3極として日本維新の会が議席を伸長させた。日本維新の会は、今回の選挙では消費税の減税や大企業向けの租税特別措置の廃止、ベーシックインカムの実現などを主要な政策として掲げるとともに、吉村大阪府知事のメディア露出の多さなどをいかして有利に選挙戦をすすめた。しかし、日本維新の会は基本政策で「小さな行政機構」「受益と負担の公平」を掲げる新自由主義政党であり、これまでも、国会で政府が提案した医療・社会保障制度改悪法案にことごとく賛成してきた。そればかりでなく、今回の総選挙ではほとんどの小選挙区で公明党と候補者調整を行うなど、まさに自公政権の補完勢力としての本質が明らかになった。
 コロナ禍で困窮する国民が、格差・貧困を拡大させた新自由主義からの決別を求めているのは間違いない。今回の総選挙は、与党とその補完勢力の巧みな選挙戦術と野党の準備不足で、そうした世論が明確な行き先を失ったと見ることができる。各党には、それぞれ選挙で掲げた社会保障制度の充実や国民生活の困窮改善のための政策の実現を求めたい。私たちは、今後とも、「要求案」の実現に向け、署名運動や国会各政党・議員への働きかけを強めていく。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方