兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年12月15日(1993号) ピックアップニュース

主張 COP26閉幕
2050年実質ゼロへ日本は脱石炭の決断を

 英国グラスゴーで開かれていた、温暖化対策の国際的なルール作りを行う、国連気候変動枠組条約の第26回締約国会議(COP26)が11月13日に閉幕した。
 人類が二酸化炭素などの温室効果ガスを排出したことにより地球温暖化が進み、異常気象が増加したことは世界の研究者や政府関係者でつくるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が今夏報告書で指摘したように、明確であり、 温暖化対策は急務である。
 今回のCOP26では、2015年のCOP21で採択された「パリ協定」の内容をさらに進めることができるかが注目されていた。
 今回採択された「グラスゴー気候合意」は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5℃以内におさめる努力を追求する決意を明記するとともに、排出量が非常に多い石炭火力発電の段階的削減のための努力の促進も記された。CO2排出権の国際的取引についても最低限の取り決めがなされた。
 各国の排出削減目標はまったく不十分で、石炭火発についても当初の「段階的廃止」から表現が後退し、エネルギー使用と経済発展の先進国と途上国との南北格差を埋めながらCO2削減を行うかの議論も不十分なまま残るなど、手放しで評価できる合意ではないが、世界中の人々やNGOなどが参加国に強く働きかけ、200近い国と地域が合意したこと、石炭火発について削減の必要性が明記されたことは多少なりとも前進である。
 会期中、石炭火発「廃止宣言」に、英独仏や韓国、ベトナム、インドネシアなど46の国と地域が賛同した。だが、世界第5位の排出国である日本は、アメリカ・中国・インドなどとともに加わらなかった。
 岸田首相は演説で、水素やアンモニアと石炭を混ぜて燃やすことにより温暖化対策を行うとアピールした。しかし、それらの生成には大量の電気が必要とされるため、実際の排出削減効果はわずかである上、コストが高く技術的にも確立していない。石炭ガス化炉に期待をかけるむきもあるが、CO2の削減率は20%に留まっている。
 昨年、菅前首相が「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」を実現すると宣言したが、中身が伴っていないことが明白になっている。日本政府が10月に策定した第6次エネルギー基本計画では、2030年の電源構成で従来型石炭火発が19%も残されている。神戸市灘区で建設が進む神鋼の石炭火発2基をはじめ、全国で石炭火発の新増設を維持する考えだ。事故が起きれば甚大な環境汚染を引き起こし、放射性廃棄物の最終処分方法も決まっていない原発を温暖化対策となるとして、維持しているのも問題だ。CO2削減は、省エネや、電源構成の2割を占めその数十倍のポテンシャルを持つ再生可能エネルギーを推進することで実現できる。
 日本政府は、エネルギー基本計画を見直し、脱石炭・脱原発を決断するとともに再生可能エネルギーや省エネの推進等を行い、「2050年実質ゼロ」を実現すべきだ。
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