兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年12月15日(1993号) ピックアップニュース

「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会・市民学習会
教育・医療を拡充し憲法理念の実現を

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前川氏は経済格差が口腔格差につながるとした

 子どもの貧困なくし、口腔の健康を守ろう−−。協会などで構成する「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会は、11月23日に、協会会議室で市民学習会「子ども・若者の貧困と教育そして歯科医療」を開催した。元文部科学事務次官・現代教育行政研究会代表の前川喜平氏が講演。また、「保険適用拡大を願う会」代表の小尾直子氏が歯科分野から話題提供し、医科・歯科医療関係者と市民ら67人(来場46人/オンライン視聴21人)が参加した。

 講演会では前川喜平氏が、文部科学事務次官として教育行政に携わり、現在取り組んでいる夜間中学校の支援の経験をもとに講演した。
 前川氏は冒頭、貧困とネグレクト問題に関し、「アメリカの教育研究者によると貧困家庭の子どもでは、貧困でない家庭に比べ、ネグレクトが12倍も見られ、親が子どもの口腔内に関心を払わない『デンタルネグレクト』が行き着くと口腔崩壊につながる」と、経済格差が口腔内の健康格差に影響している実態を指摘した。
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矯正治療の保険適用を求めている小尾氏

 またコロナ禍によって子どもの学習格差が拡大していることに触れる中で「昨年の安倍政権(当時)による全国一斉休校要請によって、子どもの学習権と生存権が侵害された」とし、具体例としてストレスによるゲーム依存の増加、給食の途絶による栄養不良、虐待や家出、自殺の増加などの影響を挙げ「改善のためには子どもの健康権を保障する学校を支える学校医や学校歯科医の果たす役割も大きい。憲法26条の『ひとしく教育を受ける権利』を内実化するためにも力を合わせよう」と呼びかけた。
 小尾氏は、自身の子どもが中学校の歯科検診時に「歯列不良で要受診」との通知を受け、受診結果提出まで求められていたにもかかわらず矯正治療が保険適用でないことに疑問を持ち、地方議会や医療団体、国会議員などに署名提出などの働きかけを行ってきた経緯を紹介。ついに今年6月に、衆議院厚生労働委員会で「子どもの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願」が全会一致で採択されたことに触れ、「子どもの健康を訴える地道な活動が、党派や立場を越えた共感を生むと実感」「この世論の輪をさらに広げるために協力を」と訴えた。
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会場とオンライン合わせて67人が参加

 参加者からは「家庭や親にばかり『自助』を押しつける政権を変えたいと思った」(医師)、「親が子どもを守れないのであれば、社会が代わりを果たすべき」(歯科医師)、「子どもの矯正治療で数十万円もかかってしまったが、声を上げることで政治を動かすことができると分かった」(一般市民)などの感想が出された。
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