2022年2月05日(1996号) ピックアップニュース
燭心
カナダのジャーナリストであるナオミ・クラインは、2007年に上梓した書籍『ショック・ドクトリン』の中で、政変・戦争・災害等の混乱に乗じて、過度な市場原理主義を進めて金儲けに利用する手法を「惨事便乗型資本主義」とした。海外では軍事独裁政権下のチリで導入され、米国同時多発テロ事件やスマトラ島地震などでも進められたと指摘する▼さて6434人が亡くなった阪神・淡路大震災から27年。コロナ禍により規模を縮小しつつも、今年も県下で多くの追悼式がなされた。震災では被災者の多くが住まいを失い、長期の避難所生活を余儀なくされた。神戸市は、震災後の都市計画を一方的に策定し、神戸空港や地下鉄海岸線などの大規模公共事業を展開。新長田駅南側の大規模な再開発は大失敗に終わり、326億円もの赤字を生み出した▼この手法は、東日本大震災でもいっそう顕著となり、仙台空港や水道の民営化、水産業特区創設など、被災者の生業復興とは程遠い政策が推し進められた。震災を機に民営化や規制緩和を進める姿はショック・ドクトリンそのものである▼昨今のコロナ禍では、医療でも遠隔診療がなし崩し的に恒久的導入された。世界規模で人々の健康といのちが危ぶまれる状況下でも、世界の富裕層への富の集積は加速したという。災害時こそ憲法25条に基づいた生活再建を掲げ、今後はショック・ドクトリンのもう一つの訳である「火事場泥棒資本主義」を繰り返さない取り組みを進めたい。(蓮)