兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年2月25日(1998号) ピックアップニュース

燭心

 沖縄で仕事をしていた頃、一夜を伴にした男女で、男性の片手前腕が動かなくなっての救急受診が多かった。手背部を中心とした感覚脱失、手の伸筋群の麻痺があれば、スナップ・ダイアグノーシスで「橈骨神経麻痺」との診断は容易である。「ハネムーン麻痺」「サタデーナイト症候群」とも言われ、腕枕時に女性の頭が橈骨神経を圧迫しやすいためとされる。「若いから羽田に着く頃には治っているよ」など軽口をたたきながら、患側前腕を背屈位でシーネ固定して帰宅としていた▼40代後半にさしかかり、災いは唐突にやって来た。書類仕事中の仮眠時に、右上腕をソファのアームに乗せて寝てしまった。2,3時間のうちに右前腕の運動も感覚も完全に麻痺し、外来の時間となった▼利き手が使えず、電子カルテの入力やマウス操作ができない。もう駄目かと思ったが、最近カルテ記載用に音声認識装置ソフトを入れてみたことを思い出した▼自分はマイクに向かって話してメモ帳に文字を飛ばし、スタッフが印刷して指示を拾い、カルテに取り込む連係プレイで乗り切った。息子(右手)よ、今は安心して休め、元気になったらすばらしいスタッフの働きに報いるのを忘れるな▼橈骨神経麻痺は最近「ホームレスマン症候群」とも呼ばれるらしい。野宿時に自分の手枕で生じるケースが増え、完治には週単位・月単位かかる場合も多い。自分の働き方を変えねばならない時が来たのだ。えてして、その時は全く唐突にやってくるものだ(眞)
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