2022年3月05日(1999号) ピックアップニュース
燭心
筆者が小学校5年生の頃、同級生に体は小柄であるが、極めて敏捷で、木登りが上手で、後方宙返りを皆の前でやって周囲を驚かせていた者がいた。傍からみていると曲芸師のようであり、今から思うと、こういう子どもがフィギュアスケートなどに向いているのだろうが、京都の町には当時、スケート場などなかった。本人は冗談半分で将来は軽業師になるのだと嘯いていたが、暴走族になり事故死してしまった▼昔、サーカスの子どもは、孤児が多かったと言われている。金を稼ぐために、孤児をうまく利用して、芸を教え込んでいたのであろう。人さらいや、ハーメルンの笛吹き男の伝説のような子どもの売買は、世界では今でも起こっていると思われる▼さて北京での冬のオリンピックが閉幕した。大会期間中には、ロシアのフィギュアスケート選手で15歳のワリエワ選手のドーピングが問題となったが、華やかなオリンピックの裏にある薄汚い闇を感じずにはいられない▼そもそも人間は、地上で活動する動物であり、鳥のように飛翔したり、空中で回転する動物ではない。15歳でオリンピックに代表選出されるということは、小学生時代から危険な訓練を繰り返してきたのは明らかである▼昔のサーカス一座でもないのに、国威発揚のため、十分な判断力のない子どもに、人体に影響のある薬物を飲ませて曲芸をさせ、一儲けすることなど言語道断。文明国のすることではない。ギリシャの古代オリンピックの原点に立ち返るべきだ。(鼻)