2022年3月25日(2001号) ピックアップニュース
燭心
ウクライナの国旗は、上が青、下が黄色である。大地に広がる麦畑を象徴しているそうだが、私は昔見た映画「ひまわり」の光景を思い出す。スクリーンいっぱいに広がるひまわり畑と、かなたの広大な地平線に青空。1970年上映だから高校生の時に見た作品だ。その「ひまわり」が、今各地で緊急上映中である▼舞台は第2次世界大戦中のイタリアと旧ソ連。ロシア戦線に送り出された夫(マルチェロ・マストロヤンニ)と、その帰りを待つ妻(ソフィア・ローレン)の、戦争によって引き裂かれた悲しい愛の物語である。ソ連側での撮影が行われたのが、ウクライナ南部のヘルソンという州。今この町もロシア軍に占拠されてしまったそうだ▼先月24日に始まった、ロシア軍によるウクライナ侵攻。今は首都キエフが連日砲撃にさらされていると聞く。千年の歴史を持つ美しい街を、何の権利があって破壊するのか。侵略をやめよという世界中の声も、かの独裁者には聞こえないのか▼ウクライナは、対ナチス戦の激戦地である。美しいひまわり畑の下には、多くの犠牲者が眠っているそうだ。今回の戦争で、ウクライナ女性がロシア兵に抗議しながら、ヒマワリの種を渡している映像を見た。「あなたがウクライナの地で死んだら、そこにこのヒマワリが咲きますよ」と。ヒマワリには鎮魂、反戦の意味もあるのだろう。むろん「ひまわり」の上映運動は単なるリバイバルではない。ウクライナに連帯の思いをこめて、もう一度観てみたい。(星)